だから先へ進めない ページ27
「飛彩せんせってさー」
私のこと、名前で呼ぶしタメ口だよね、と発された言葉。特に気にした風もない、純粋な疑問を纏った声音。でも、その質問は俺の心を乱すのには十分すぎた。
「…何か問題でもあるか？」
「いんや、別にいいんだけど。飛彩せんせってそこら辺きちんとしてるのに私には砕けてるのが気になって」
なんか特別っぽくて嬉しいじゃん？と照れを隠すように笑った姿を見て、不覚にも胸が高鳴った。分かっている。彼女の言う特別が、俺の望むような意味を含んでいないことくらい。
「敬うに値すると思ったらそれ相応の態度は取る。Aにはその必要性が感じられなかっただけだ」
「うっわ〜、飛彩せんせそんなこと思ってたの？傷つくなぁ」
けらけら笑いながら冗談めかして傷ついたフリをした。これを冗談だと受け取ってもらえるほどの信頼関係は築けているつもりだ。まあ、そのせいでそれ以上の関係に進展させるのが難しいのだが。
「いいから診断書を片付けてください、A先生」
「…やっぱいつも通りでいいや。飛彩せんせに敬語使われると気持ち悪い」
それはこっちのセリフだ間抜け女医。そんな憎まれ口と、少しの本音を織り交ぜて。
「…ただ、特別だというのは間違ってはいないかもな」
「ふ〜ん？飛彩せんせって実は私のこと大好きでしょ」
いつも冷たいけどさ、と付け足された、半分事実で半分虚構な彼女の発言。彼女の言う好きと俺の好きとは、きっと意味が違うのだろう。きっと、なんて単語を使って希望を持ちたいほどには。
何も知らない彼女を傷つける勇気は俺には無い。そうやって自分を欺き、正当化した正義で逃げてきた。でも、一度くらい、彼女の冗談に肖ってみようと思う。
「イエス、と言ったら？」
交わった視線はそのままに。彼女がゆっくりと息を呑んだ。自分でも分かる、冗談無しの真剣な声色。
でも、困ったように曖昧に微笑むAを見て、言ったことを後悔した。仕事仲間、よくて友人の立ち位置にいた自分がいきなりこんな事を言ったのだから。
冗談だ、そう口を開きかけた瞬間。開いたCRの扉から覗いた研修医の姿。それを見た途端、Aはにやけた顔をしてそっちに向かって走っていった。
「永夢くん聞いて聞いて〜！飛彩せんせ、私のことだぁい好きなんだって！」
「そこまで言ってない！話を盛るな間抜け女医！」
どうやら、俺の一世一代の賭けは全く届いていなかったらしい。それに安堵した自分がいたことに、思わず苦笑が漏れた。
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横峯俊(プロフ) - 星野よだかさん» 私もたまにやってしまいます・・・予測変換って怖いです (2020年1月30日 21時) (
レス) id: c8474ba40d (このIDを非表示/違反報告)
星野よだか(プロフ) - 横峯俊さん» ひぇぇお恥ずかしい！盛大に間違えてますね…お見苦しいものを載せてしまい申し訳ございません！ (2020年1月30日 14時) (レス) id: 61486b168d (このIDを非表示/違反報告)
横峯俊(プロフ) - いつも楽しく拝見させて頂いてます。一つ変換ミスを見つけたので、修正お願いします。壇黎斗のとの字の漢字が変換ミスしてますよ！これからも応援します (2020年1月30日 12時) (レス) id: c8474ba40d (このIDを非表示/違反報告)
星野よだか(プロフ) - ゆずさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます！詩島剛は特に気合入れて書いていたのでそう言っていただけて安心しました。拙い文ですが、これからもよろしくお願いします！ (2019年9月23日 20時) (レス) id: 61486b168d (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - よだかさんの書く剛好きでした！これからも応援してます！ (2019年9月23日 19時) (レス) id: 59916f9a2d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：星野よだか(ほしのよだか) | 作者ホームページ：なし
作成日時：2019年8月15日 20時
