そんな2文字で終わらせていいものか【HQ】 (ページ13)

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……とはいえ、あの場に再び行くのは勇気がいる。初期装備でラスボスに殴り込みにいくようなものである。

田中くんはあんな調子だし、一人でいくしかないのか。

体育館に向かいながらうんうん考える。

＿＿見つかった時なんと言えば、夕に言われて……いや、それで空気が凍ってしまったら。そもそも、マネージャーでも無いのに、たかが幼なじみなのに過保護すぎる気がする。絵のデッサン……いや、今日は美術部はオフである。毎日絵を描いているといえばそうだし美術室に行くのはいいのだが、美術の先生兼美術部顧問の三枝先生に見つかったら面倒くさい。次のコンクールの話は今は聞きたくない。

……なんて考えていたらいつの間にか体育館の前。

ボールの跳ねる音がする。声が聞こえる。
……やっぱり引き返そう、夕には適当に言っておけば、

「……来栖？」

タイミング最悪。

『……ぁ、ぇっと、田中、くん』

田中くんは驚いたようにこちらを見ている。練習服を纏い、シューズを片手に持っている彼はこれから練習だろうか。

「どうしたんだ？ノヤっさんなら、」

『あ……うん、知ってる。その、旭さん…？って、今練習に来てる？』

ストレートに聞きすぎたか。変に思われていないだろうか。
田中くんは目をキョロキョロ左右に動かしたあと

「来てねぇ」

と一言だけ。

その声の暗さに察してしまう。

『……うん、分かった。……ごめんね。』

「なんでお前が謝るんだよ」

『きっと夕が何かしたんでしょ。分かるよそれくらい。』

「いや、その、」

しどろもどろになる彼に申し訳なさが増す。

『夕は、大丈夫だよ。

バレーは、辞めさせない』

そんなもの許さない。

私を"才能"で縛ったやつに逃げ道なんてやるものか。