コイバナ【短編集】

かのじょ ページ37

彼女はびっくりするほどに優等生だった。



嫌な顔１つせず笑い返してくれる、話しかけてくれる、


わからないことを聞いたら、わかりやすくとは言えないけど教えてくれる。


聞く人が聞けばわかるのだ。彼女の説明でわからない人はどうしようもないと思う。



僕はそんな高嶺の花の彼女が好きだ。


たまに見せる憂鬱げな表情や、怒った顔。テストがめんどくさいとだらける顔。


彼女は優しかった。だから僕が告白したらOKしてくれることも、僕は知っていた。


断り方を知らないから、誰かと付き合ったことがないから



だから、実際今こうやって彼女の横にいるのが僕でいいのかは不思議だ。


本当に不思議だ。


彼女はびっくりするほど一途だった。僕だけだった。


無断で男と遊びに行くことはなかったし、(僕もしないけどさ)


ラインもそんなに返してなくて。でも僕には毎朝毎晩必ず一回連絡をくれる。


「おはよう」と「おやすみ」


今日の出来事を話すのも楽しい。



気づけば惚れ込んでいたのは僕の方だった。


ちょっとした出来心だった。彼女が欲しかっただけだった。


Aなら綺麗だし、受け入れてくれると思ったけど、こんなにいい子だなんて知らなかった。



僕もいつのまにかAだけだった。


他の女の子よりも誰よりも彼女が輝いて見えた。素敵だった。


そのあどけない笑みと、何かを含む物言いもだいぶわかるようになった。


言葉の節々に隠された毒に気づけることがこんなに嬉しいとは思わなかった。




「すき」と言ったら当たり前のように「すき」が帰ってくることに驚いた。


「あいしてる」と言ったら小声で「わたしも」と返してくれるのがこんなにも嬉しいことだなんて知らなかった。



このまま、この幸せを君と味わっていたい。


だから、どうか僕と、


『結婚してはくれないだろうか』

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