コイバナ【短編集】

えほん ページ33

「「


あるところに、魔法が使える人達と、そうではなかった少年がいました

人々は彼を忌み嫌いました。

彼を生んだ両親ですら、彼のことを嫌ってしまいました。


「どうして魔法が使えないんだ！」

「貴方は私たちの子ではないわ！！」


みなが黒髪にカラフルな瞳を持つ中、彼だけは白い髪と黒い目でした。

彼はそんなことを言われ続け、ついにはこう思いました。


(僕はダメな子なんだ、居てはいけないんだ)


齢わずか10歳にも満たない状態で、彼は家を出ました。


少しばかりのお金を持って、それから深く深く、フードを被って。



彼は山にこもり剣技を磨きました。

魔法がなくても、彼は少しばかりの才能があったので難なく生活できるようになりました。



そして彼は一度だけ町に降りて、本を買いました。

どんな本でもよかったのですが、文字を覚えるためだったので、絵本を買いました。



彼は絵と文字を見比べ続け、なんとか文字を覚えました。

それから彼は気を薄く切ったものに自分の生い立ちを綴ることにしました。


『私は生まれてすぐ、化け物として扱われ始めました』


そこにあったのは魔法が使えない“だけ”で、1人の少年がひたすらに否定される物語。

けれど、彼には後悔がありませんでした。それに幸せでした。


ある日同じ様に真っ白な髪を持った少女と出会ったのです。

彼女もまた、彼と同じ様に軽蔑されて生きてきました。


2人は後に魔法が使えなくなってしまった世界で好かれる、なんてことはありませんでした

世界はある日突然魔法が使えなくなったので、その理由を2人に押し付けたのです。


『魔法が使えないことを呪った彼らは、世界の人々が魔法を使用できない様、

彼らの命と引き換えに、神様に願いました』


こうして語られるのは間違った神話。

本来語られるべき美しき神話は、曲がった大人たちによって、無きものとさせられました。



」」


彼はそのあと微笑んで、こう言った。


「2人はとてもとても幸せだったんだよ」


次に私が瞬きしたあと、彼はもう、そこには居なかった。

彼女は真実を確かめるために動きだす。






ーーこれはどこにでもあるお伽話。ーー

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