コイバナ【短編集】

ゆめ ページ28

私は届かないと知って、手を伸ばす。

全く逆のことを思いながら、叫ぶ


「行って！！私はもういいから！！」


彼はそれでも諦めてくれず、私に手を伸ばした


「はやく！僕の手を取って…！！」


彼はゆっくりこちらに向かう、


「だめ！！きちゃだめ！！」


ふと、彼の頭上に赤く燃える「何か」が落ちて、


私がそれを呆然と見つめている間にも、彼はそれに飲み込まれていく。

非力な自分が情けなくて、つらくて


「どうか、どうか生まれ変わる時は強い体に…」


燃え盛る屋敷の中、そう願わずにはいられなかった



ーーーー

がばっと布団をめくって起きる


時刻はまだ深夜、辺りは真っ暗である。


(なんだ…夢……。)


そんな思いとは裏腹に指先の震えは止まらず、背中には冷や汗が伝っている


(これは、落ち着かないとねれそうにないな)


そう思った私は、近くにあったスマホをとってこんな時間でも起きてそうな友人にらいんする


ポコっとトーク画面に浮かんだのは薄っぺらい言葉


【起きてる？】


｛起きてるよー、めずらしーな｝


それでも彼からの返信にはやはり胸が高鳴る


【ちょっと起きちゃってw】


｛そっかー、ねれなさそうなら暇電でもする？｝


願っても無いお誘い、

だけどそれは叶わない。


【ごめ、通話はむりそ、親がいるから…】


｛りょーかい、無理しなくていいよ｝


気を遣わせてしまったみたいで申し訳なくて、

代わりに今見た夢を彼に聞かせることにした



【そういえばね、不思議な夢見たんだ】


｛お？どんなの？｝


【なんかね、目の前で愛する人(仮)が亡くなっちゃう夢】


｛あー？似たようなのならおれもみたなぁ、

俺は必死に目の前の女に向かって手伸ばすんだけどさ、そいつがまた強情で手とってくれなくて

ゴタゴタやってる間に火の中に包まれちゃう夢｝


【ほとんど一緒！？私女子視点】


｛すげ…偶然というより運命感じた｝


思わず頰が緩んだ。

気づけば、あんだけ感じていた恐怖は去り、彼への愛しさで溢れている


【ねぇ、運命だと思うなら付き合ってみない？l


打つだけうってでりーとしていく。


【そう、なのかもね。少なくとも私は君のこと結構好きだよ】


ちょっと思い切った言葉。

(これぐらいなら、友情として受け取ってもらえるかな？)


｛お？まじか！俺も結構お前のこと好きだよ！｝


これは一体どっちの意味なのか、

それは次の彼の一言で決まったのだった


｛あ！もちろん恋愛的な意味でな！｝

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