コイバナ【短編集】

きらい ページ20

大っ嫌いな人がいる。

いつも私に生意気ばっか言ってきて、屁理屈で固められたような変な人。

嫌味しか言ってこないと思えば


熱を出せば看病してくれる。

終わらない仕事があれば何故か手伝ってくれる。



どっちつかずの生ぬるい関係。

ずっと彼のことが嫌いだったはずなのに、どうしてだろう。

いつのまにか頭の中は彼一色になって、自分さえも見失うほど彼を見ている。



何も手につかなくなって、このモヤモヤとして気持ちがわからなくて、
少しの好奇心でネットで検索してみた。


まぁ、結果はご察しの通りといいますか？

恋って気づいてしまった。きっと気づかない方が良かったんだろうなぁとか。



でも恋ってわかったら閉じ込めてしまうのも簡単で、私はぼーっとしなくなったし

彼のことを考えるのもやめた。



とは言えど考えてしまうから、急いで振り払う程度なのだけれど。

でも関わらないわけじゃなくて今まで通りを決め込んだ



彼はそんな私をどう思っただろうか。

面白みがなくなってつまらない女だと思っただろうか。



彼と私はそんな不安定な関係のまま数年続いた。

気づけばいい。でも気づいて欲しくない。



矛盾ばかりの心に蓋をしても、お酒を飲めばついつい流れてしまって。

後悔と不安と期待でいっぱいになる。



ある日、2人で飲み会をしたことがあった。

2人とも泥酔していて、口を滑らせた。


「モテないから彼氏いないんだよね〜？」


なんて言葉から始まった些細な言い争いは私の一言でおわる。


「あんたが好きなのに他の人と付き合うわけないじゃん？」


なんて今思えば馬鹿みたいに口を滑らせたわけで、


「俺もお前のこと好きなんだけどな〜いつ気づくかなって思ってた」


なんて。

酔っていた私たちは馬鹿で。


「え、じゃあ付き合う？」

「俺はそうしたいんだけど。」


と、酔っていた調子で簡単に始めてしまった。

起きて、らいんに書かれていた「俺ら今日から付き合ったんだよな？」の文字を見て

私は心底後悔しつつ、これからの幸せを噛み締めて行こうと思えた。




嫌いだけど大好き。

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