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夏に近いけど、やっぱりお風呂は気持ちいい。体をあっためると疲れがでてきたみたいで、一気に体が重くなる。寝落ちする前に上がらないと…。
「お、でてきたって髪の毛びしょびしょなんですけどAさん!」
「ん、そのうちかわく…」
「ダメだって。湯冷めしたらどーすんの。風邪ひくだろー」
わしゃわしゃとタオルで髪の毛を拭いてくれる。その手つきにうつらうつらしそうになる。
「部屋行くぞ。ついたらドライヤーしてやるから」
「ん…」
手を引かれるまま部屋へと向かう。いつもながらこの光景は、色んな人達に見られてることを、私はもっと後に知ることとなる。
「ここ椅子座って。ドライヤーどこだ?」
「いちばんしたの、ひきだし」
「ここだな?」
ブオーーっと大きい音をたてながら暖かい風が当たる。優しい手つきで髪を乾かされるのは何回くらい、やってもらったんだろう。
「ゆきくんは、びようしさんにも、なれるね」
「んー?」
「かみかわかすの、じょーず」
「美容師さんは髪乾かすだけじゃなれませんよー。どーですー、おきゃくさーん」
「きもちー…」
ひょいひょいと髪を乾かしながら、ちゃんと櫛で髪を解いてくれて、何をどうするのか分かったかのように、手慣た手つきで乾かし終わった。
「よし、こんなもんだな。次爪。A椅子に座ったままだとやりずれーから一旦こっち座ってくんない?」
「んー…」
眠たい眼を頑張って起こして、ゆきくんに手招きされてる方へと向かうと、膝の間へと入り、ブランケットをかけられる。これ、どっから持ってきたんだろ…。
「ゆきくん…?」
「もたれかかっていいから」
まだまだ私の世話焼きは卒業出来ないようです。
逆、かな。私が卒業できないんだ…。
パチンパチンって音が聞こえるけど、ゆきくんの体温と、ちょっとだけ聞こえる鼓動の音がとても心地よくて、私の視界は真っ暗へと変わってしまった。
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作者名:星河実羽 | 作成日時:2023年9月9日 14時