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「あ、A!と」
「何、いつ知り合ったの」
「ここに来る途中、車の中で。えーと…」
「沢村栄純だよ!」
「さわ…」
「沢村!栄純!」
「う…ごめん」
「ははっ、Aは人の名前覚えるの苦手なんだよ。ま、悪く思うな。ほーら、肩慣らしにキャッチボールでもしよーぜ」
「ボール、持ってくる」
「お、助かる」
ボールを1個借りにその場を離れる。大丈夫かな…。あの二人。
2人がキャッチボールし始めると、えーと、男の子は少し痛そうにしていた。
「なんだ?お前硬球は初めてか?」
男の子はすごくボールをまじまじと見ていた。
初めての硬球はびっくりするよね、重いし硬いし。
「おい小僧、詫び入れとくには今のうちだぞ。1度マウンドに上がっちまったら何処にも逃げ場はねーからなあ」
「何様だよえらそーに。逃げ場がないのはてめーだっつーの」
「ぁあ?」
「ていうか、ぶつけられても文句言うんじゃねーぞおらあー!!!」
「くはははっ、やっぱこいつおもしれー!」
私は全然面白くないです…。むしろヒヤヒヤして怖いくらい…。このこと…、かんさんにバレたりでもしたらと思うと…ぁ、ダメかも…。
「おらああ御幸ー!何笑っとんじゃー!!」
ほらーっ。
「Aは皆と一緒にいろよ。打球飛んできたら危ねーし。そんなことならねーとは思うけどな」
「ゆきくん、なんか余裕そう」
「余裕じゃないけどさ、ま、面白そうではあるからな」
面白そう。いいなあ。私ももう一度投げてみたい。
あの子は最初ボールを地面に叩きつけた。失投…?
何やら打ち合わせしている…。肩組んだり笑ったり、男の子がゆきくんに噛み付いたりして…なんか…。
「いいなぁ」
「Aちゃん沢村君に嫉妬?」
「しっ!?」
「大丈夫よ。御幸君は沢村君に投手としてしか興味がないから」
「それは、それで…。なんか嫌です」
「ん?」
「私だって、投手、だから」
(なるほどね。ここにも投手の火がついちゃったわけね)
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作者名:星河実羽 | 作成日時:2023年9月9日 14時