2 ページ37
ボールはもう落ちてない、かな。あとはこれを洗って…。
クリス先輩…、今日もリハビリかな。ゆきくんに聞いた時は驚いたな。それにあの時の目…。諦めてるような目だった。またクリス先輩と野球したいな。
「A」
「降谷君?」
「ボール1個借りていい?御幸先輩に球受けてもらうから」
「わかった」
今日ブルペンで投げてた思うけど、まだまだ投げたりないのかな?
気持ちはわかるな…。私もそうだったから。
ゆきくんが中学卒業してから、まともに投げれなくて。あの庭で投げ込みするくらいだっけ。何が良くてどうするのかを考えてひたすら投げて…。お母さんにやりすぎって怒られたのよく覚えてる。その後ゆきくんの名前が出てきたのは驚いたけれど。
「A?」
「え?」
「どうしたの?」
「どうもしてないよ?」
「なんか、寂しそうだった」
「そう、かな?」
「うん」
「…大丈夫だよ。ちょっと前のこと思い出してただけだから」
「そう?」
「うん、ほらゆきくん待ってると思うから行ってあげて」
「…わかった」
今はもう、中学の頃とは違う。試合に出れなくても、投げていられるから。ここでは、凄い人たちと一緒に練習できるから。この前みたいに、身内での試合では選手として出してくれたから。
全然、大丈夫。
ボールみてたら皆頑張ってるなってくらい、茶色になってる。皆の努力の結晶のボールを洗うことなんてあの頃に比べれば全然楽しい。この中に私のも詰まってる、よね?
「A!!!」
あれ、この声…。
「ゆきくん?」
え、なんか、凄い勢いで、こっち向かってるけど、なんで?
あれ、降谷君も一緒に?2人ともいったいどうしたの??
近くまで来たなと思ったら、ぎゅうっと思いっきり抱きしめられた。
ちょっとだけ、苦しい。
「ゆ、ゆきくん、どうしたの?」
降谷君は降谷君でぜーはーしてる。せ、説明お願いします。
「どうしたのはこっちのセリフだ。お前こそどうした。悩みがあるなら言ってみろ!」
「な、悩み?」
「降谷に聞いたぞ。寂しそうって!」
つ、告げ口っ。皆、私の事ゆきくんに告げ口してる、気がする。
「何が寂しい、言ってみろ!」
「え、あ、さ、寂しくは」
「言えよ、なんでもいいから。くっだんねーことでも、ちょっとしたことでも、眠いとかでもいいから」
ね、眠い?眠くは、ないけど。え、なんだろ…。
9人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:星河実羽 | 作成日時:2023年9月9日 14時