第1球 沢村栄純 ページ2
第一志望青道高校に決めてから私は、時間がある時はなるべくあのグラウンドに入るようになった。
やっぱり人数が多すぎて、覚えることに苦戦した。
でもそこにはゆきくんがいたから、なんとか顔は覚えた…と思う。1部だけだけど…。
少なくとも、あの時対戦したもち先輩とりょー先輩、哲先輩、増子先輩は覚えることができた。
かんさんからの伝言をおとーさんに伝えると、やっぱり怒っていた。というか、その後がいろいろ大変だったというか…。
それは…
「は？寮？」
また私は青道高校にマネージャー見習いとしてきていた。
「うん、おとーさんがこっちから遠いだろって」
「いやいやいや、ここ男性寮なんですけど？」
「おとーさんが、かんさんに連絡とってて」
「許可おりたと？」
「うん」
「うわ、おじさんまじかよ…」
何故か怒鳴って電話後しに話しているのをおかーかんがハリセンで叩いてたのを思い出しながら、ゆきくんにどう通うのかを話してみた。
「それでおとーさんが、これをゆきくんにって」
「…果たし状って見えるんだけど」
「うん」
「………いや、これ脅迫状じゃね。お前の命はないと思えって書いてあんだけど」
「でもおとーさん、間違えずにゆきくんにって。何が書いてあるの？」
「あーぁー、…ん、まあ、お前は気にするな。Aに頑張れーって書いてあるだけだからさ」
「そうなんだ」
(本当は過保護を拗らしてあーだこーだいろいろ書いてあるけど、伝えなくていいだろ)
「俺ブルペン行くな？怪我に気をつけろよ」
「うん」
マネージャー見習いと言っても、先輩たちと一緒にドリンクを作ったり、スコアを見せてもらったり、マネージャーさんとは何も変わらないことを少しずつやっているだけ。
「Aちゃん、平気？もう寒くなってきたからドリンク作るの大変でしょ？」
「全然、だいじょぶです」
「本当に？」
「だ、だいじょぶです」
貴子先輩と一緒にドリンク作ることもあり、最初は緊張したけれど、今はこうやってお話しながらできるくらいまでには、成長し始めた、と思う。
「ごめんね。Aちゃんの大丈夫は信用出来ないって御幸君が言ってたから」
ゆ、ゆきくん言いふらしすぎ…。
「ゆきくんは心配しすぎなんです…」
「心配する気持ちもわかるけどなー。Aちゃん可愛いから」
「ぅ」
貴子先輩みたいな美人さんに言われるとちょっと…、照れる。
「さ、ここはいいから戻ろうか」
「はいっ」
私は今、楽しく野球している、と思う。
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作者名：星河実羽 | 作成日時：2023年9月9日 14時
