03��たったひとりの愛する人 ページ24
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この間買ったばかりのジャケットに腕を通して鏡張りのクローゼットの前に立つ。
「ん、……よし」
今日は世界で1番好きな女の誕生日で前々からこの日だけは予定を開けておいた。
1日中そばにいてあげる、という約束をすると彼女が嬉しそうに笑ったのが忘れられない。
「準備おっけ……」
「あいつ、終わってんのかな……」
必要なものだけ入れたカバンを持って、彼女が支度をしているであろう隣の部屋へと向かう。
コンコン、とノックをした後「入るよー」なんて一応声を掛けて入ればまだ見たことがない服を着ている彼女がいた。
「あっ、ばぁうくん。……ん、」
化粧台の前で座っている彼女に近づけば瞳を合わせてニコニコ微笑む可愛い子。
赤に染まったその唇に軽いキスをして頭を撫でる。
「誕生日おめでとう」という言葉は朝目覚めてから1番に伝えたから今は違うことを言うべきだろう。
「っ、……口紅、ついちゃうよ……？」
「1番に口にするのがそれ？ 俺の心配してる場合？」
「ぁ……。キスが嬉しくて……、」
後になって「落ちてないかな、」と心配して鏡と向き合う彼女。今日も可愛さは絶好調らしく「大丈夫、似合ってるよ」と声をかけた。
「んへへ、」
「今日可愛い服着てるじゃん。……いいね」
「うん、そうなの」
「そんなの初めて見た気がするけど……。お前持ってたっけ？」
デザイン性とボリュームのあるふわふわの袖に四角くくり抜いたような首元。
少し前かがみになれば谷間が見えてしまいそうなほど大きく空いた白いブラウスに彼女にしては珍しい黒のマーメイドスカート。
首元には以前プレゼントしたチョーカーとネックレスをつけていた。
「見えすぎじゃない？」
「そう、かな……。寒くはないんだけど」
寒さなんて1ミリも心配していなかった。
普段露出をしていない服を好んで着る彼女がこうも白い肌を見せていると噛みつきたくなってしまう。
無理やりにでもつけて着替えさせようかな……。
いや、でも誕生日だしな……。
ある種の葛藤。
好きな服を着せてお祝いしてあげたいという気持ちといつもの服を着て欲しいという気持ちがぶつかり合う。
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作者名：Stellar | 作成日時：2024年1月28日 14時
