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「あの。……さっきの、ロウソクのお話……」
「あぁ。良くするじゃない？
真っ暗にして歳の数のロウソクの火を消すってやつ」
「……そう、なんですね」
「あら。したことない？」
「……たぶん、……1回は、……。
小さい頃なのであんまり覚えてないんですけど」
ぼんやりとだけ。
物心ついた時に4本のロウソクの火を消した記憶が抽象的に残っている。
その時の記憶に恐怖心はなく、むしろそのロウソクの火がキラキラ輝く光に見えていた。
「小さい頃の話なら覚えてないのも無理ないわね。
……私は中学生くらいの頃までやってたから」
「……豪華ですね」
「豪華、……かは分からないけれど。
両親がそういうイベント好きなのよね」
「ふふ。素敵なお家ですね」
そのエピソードだけでツバキさんの幼少期はとても幸せに包まれていたことが分かる。
きっと大事に大事に育てられたのだろう。
だからどの部分を切り取っても美しくて綺麗な方だ。
「そうかしら？」
「羨ましいです」
「ふふ。まあ、幸せな家庭ね、確かに」
くすくす口元に手を添えて微笑む彼女が眩しい。
「でも今考えてみるとちょっと残酷じゃない？」
「ざん、こく……？」
「だって、自分の歳の数の火をふっ、って息で消しちゃうのよ？
縁起が悪くなったりしないのかしら」
「…………。考えたこと無かったです……、」
確かに残酷と言われれば残酷なのだろうか。
せっかくの灯火を自らの手で吹きかけるのだから奇妙な行為といえばそうだ。
「なんで吹き消しちゃうんだろう……、」
「まあ。火をつけたままだと危ないからかしらね」
「なるほど……」
「食べづらいし、……。妥協して消したのかも」
妥協して消す……。
すごいパワーワードがツバキさんから飛び出してくる。並んでいる間、ずっとくだらない話を真剣に交わしながら、順番が来るのを待った。
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「うん、大体は決まったわね」
「はい。ありがとうございます」
「どうしましょうか。お買い物ももう大丈夫だとは思うんだけれど……」
ツバキさんが気にしているのはこの後の時間の使い方のことだろう。
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作者名：Stellar | 作成日時：2024年1月28日 14時
