Ⅰ ￤ラブドールは甘い夢がみたい。／ばぁう (ページ11)

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「……。はぁ、じゃあソレ超えてくから」

「？」

　なんの宣言なのかは分からないが、ばぁうくんはもう決めてしまったと言わんばかりに伝えてくる。

　超える……って。

　……いったいなにを……？

「お前の今の嬉しいって気持ち、全部超えるようなプレゼント用意するから、ちゃんと待ってて」

「っ、」

　あまりにも堂々とした宣言に思わずゴクリと生唾を飲んだ。

　ばぁうくんが私の誕生日の時にどんなことを仕掛けてくるか分からない。

　楽しみなような少し怖いような感情が浮かんでいた。

　スっと金色の瞳を細めて睨むばぁうくん。

　しなやかなその指がまた私の頬まで伸びてきて、むにっ、と摘んだ。

「わかったか」

「ひゃい、」

「なに？『ひゃい』って。随分と可愛いお返事するじゃん」

　だって、痛いんだもん。

　さっきまで砂糖をドロドロに溶かして流し込んで来ていたはずの甘さが急に痛みに変わる。

　まるで虫歯にでもなっちゃったみたいにチクチク、する彼の態度の変わりようは未だにどこでスイッチが入っているのか分からない。

「いい子だね」

「ふふ」

　ほら、また甘くなって。

　溶かされていく。

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「あっ、……ばぁうくん。あの……」

「なに？どうした？」

「その。ケーキのね、材料とか買いに行きたくて……」

　思い出したかのようにばぁうくんに呟く。

　彼の7周年の記念日まで残り10日前後でそう伝えれば「あー……」とわざわざスケジュール帳を開いてくれた。

「いいじゃん。いつ行く？」

「あっ。えっと……その。
一人で、その……じっくり選びながらお買い物したいな、って……」

　そう言えばお気に召さなかったのか「えー」と不満げな声を上げるばぁうくん。

　そりゃあそうだ。

　いつもならこの流れでデートに持っていくのに今日は違う。

　だって、ケーキの材料を買いに行くんだもん。

　プレゼントとかも買いたいし……。

　それにばぁうくん忙しいから、わざわざ時間作ってもらうのも悪いと思っちゃうよ。

　12月に向けて色んな準備やレコーディングなんかも毎週予定が入っているようなばぁうくん。