▽07��毒林檎 ⚔️💛 ページ8
✦ 黄色の騎士が姫を守る話 ✦
容赦のない魔の手が姫に降り注がれる。周りの人達は誰も気にかける素振りはなく、全員が見て見ぬふりだ。
「離して」と言ってみても無駄。
聞く耳を持たない男は姫をどこかに連れていこうとしていた。
犯罪だ。誘拐という名の。
それなのに周りの人が動いてくれないのを見ると、なんて冷酷な世界なんだと思ってしまう。『日常茶飯事』『カップルだと思っていた』なんて言って目をそらすんだろう。胸糞が悪い。
「ちょっと。……この子。嫌がってるように見えるけど？」
「あぁ、俺？ 俺はこの子の連れだけど。……何か用でもありました？」
突然現れたヒーローの名を口にする。男よりも背の高いそうまさん。男からしてみれば威圧感があったのか、すぐに手を引こうと怖気付いていた。
「ないですよね」
「……離してもらってもいいですか」
口調は丁寧だがひしひしと怒りが伝わってくる。そうまさんにつられて見ていられなくなった傍観者達も一緒に「離せ！」「警察呼びますよ？！」なんて言ってくるが姫にとっては1番初めに助けてくれた彼が1番のヒーローに見えた。
「ふぅ……、たく。しっぽ巻いて逃げるなら初めからしなきゃいいのにね」
「……って。お、……姫？ どうした？」
「あぁ、怖かったんだね。遅くなってごめん」
よしよしと人前で甘やかされるのはあまり好きでは無いが、今はとても心地が良い。
もしそうまさんが駆けつけてくれなかったと思うと怖くて仕方がなかった。
「姫、今日は俺が1日お供するよ」
「また何かあったら大変だしね」
「それに」
彼の口から続く言葉が予想できなくて、そうまさんを見つめる姫。
綺麗なその目に見つめられた彼は少しだけ照れてしまう。あまり綺麗で、自我を抑えるのが大変だ。
「姫とデート出来て嬉しいからね」
「あははっ。もしかして照れちゃった？」
「もう、かわいいな〜」
「よし、ほら。行こ。姫」
「楽しませてあげるから！」なんて元気よく言ったそうまさんの手を繋いで2人で歩き出す。
この後の時間が姫にとって素敵なものになりますように。
黄色の騎士はアフターケア付き。
𝐍𝐞𝐱𝐭 ❥❥❥ ⚔️🩵
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作者名：Stellar | 作成日時：2024年1月14日 18時
