水中恋歌／ばぁう (ページ9)

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Alice in 冷凍庫ページ9

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「ん……、」

　ひんやりと冷たい。
　先程とは真反対の温度に目を開ければ知らない世界が広がっている。

「……ど、こ……？」

　辺りをキョロキョロと見渡すと一面中、白の氷の世界。足元も冷たく、触れる空気も痛々しい程凍りついていた。

「ふ、くが……。浴衣じゃない、」

　先程までばぁうくんが選んでくれた可愛いレースの浴衣を着ていたというのに全く別の服を今着ている。

　誰が選んだ服なのか袖のない白いシャツに、学生服のようなプリーツのスカート。そして防寒服とは程遠いシースルーの長袖の羽織りを着ていた。

(レンタル……。返さなきゃいけなかったのに、)
(それにしても、この格好……。寒し、腕が……、)

　幼い頃から消えていない爛れた皮膚は、シースルーの羽織りでは隠せない。ぎゅっと左腕を隠し、雪国に似た景色を彼女は混乱しながら先程まで状況を辿ってみる。

(えっと、ばぁうくんと花火を見に来て、)
(神社が、よく見えるって噂で……、)

「ばぁうくん……？」

　はっと我に返った彼女は近くに愛しい彼が居ないことに気がついた。先程まで確かに手の届く距離にいた彼がここには居ない。

　それが彼女にとっては最悪の自体だった。

「っ、ばぁうくん……っ！」
「どこ……っ？どこにいるの……？」

　困ったところで「わっ！」と脅かすいつものイタズラならどれほど良かったか。

　辺りに隠れられそうな場所もなければ、だだっ広いだけの白い世界で声が届いているのかすらも怪しい。

「はあっ、……ばぁうく……っ、」
「なん、……どこ、……ここは。……ばぁうくんは、どこなの……？」
「ばぁうくんっっ……！へんじ、……な、い、」

　震える声が余計に不安を煽る。完全にひとりぼっちの世界で、静かに涙を流すと、その雫さえも彼女の瞳からこぼれ落ちた瞬間に綺麗な宝石となり砕けてしまった。

「……っ、さむい、……ばぁうくん、」
「凍えてないといい、な……、」
「……っ。さがさなきゃ、ばぁうくんの所、行かなきゃ、」