水中恋歌／ばぁう (ページ7)

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　見る度、触れる度に彼女のことを可愛いと思ってしまうほど重症。自分ばかりが溺れていると自覚しているのが嫌で、引きずり下ろすように彼女も沈めていく。

「俺の事大好きじゃん」
「！うん、好き。大好き」
「はぁ、……本当今日かわいいね。なんなの？狙われちゃうよ、俺に」
「が、がんばる」
「ふっ。何をだよ」

　あんまり会話になっていないそれを繰り返しながらフラフラと花火が見やすい方へと移動する。

　が、人気の花火大会ということもあり、先に進めばしばらく動けない事は確実な上に暑くてうるさくて、鬱陶しいの最悪な条件は確定だった。

「んー、どうしよっか。穴場とかここら辺あったっけなぁ……」
「……穴場……、」

　そういえばレンタルショップで2人組の女の子達が言っていた事を思い出した。少し遠くにある穴場スポットの事を。
　クイクイっとスマホを触るばぁうくんの袖口を引く。

「あー、なに。今調べてるんだけど。ちょと待って」
「近くにね、あるの。穴場スポット。えっとね、神社って言ってた」
「……言ってたって、だれが？」
「えっとその……」

　説明力のない彼女の話を聞きつつ、ばぁうくんはマップで近くに神社がないか調べた。確かにひとつだけ。歩いて5分くらいの場所に境内がある。

「言ってるやつってこれ？」
「……かなぁ……？そこまでは分からなくて……」
「ま、とりあえず行くか。行き道で花火上がるかもだけど」
「うん」

　片手でラムネとりんご飴を持っている彼女のひとつを貰って手を引くばぁうくん。

　ここで落とされてモタモタされたんじゃ通行人の迷惑になってしまうし、何より、重たいラムネを持ってる彼女が危なっかしく見えてしまった。

「やっぱり持ってあげる。お前落としそう」
「う、ありがとう……」
「ふふ、手だけは離しちゃだめだよ」
「うんっ」

　今日1番の彼女の返事で満足したばぁうくんはGoogleマップの言う通り、指示に従って歩き出す。