水中恋歌／ばぁう (ページ5)

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「う、ううん」

　少しビクつきながら首を横に振る彼女。そんな姿が小動物のように可愛くて、思わず殺してしまいそうだ。

(ホント、うさぎみたいな子)

　触ると柔らかくて、髪の毛はふわっと空気が入ったような質でずっと撫でたくなる。けど今日浴衣に合わせてアップにした髪型はケープで固めてあるせいか、その柔らかさがなくなってしまっていた。

「もしバレても本当のこと言えばいいだけだし、お前が気にするようなことじゃないよ」
「う、うん」
「それよりほら。今日は夏祭り楽しみたいんでしょ？初めてなんだからさ」
「うんっ」

　実はまだデートで夏祭りと言うものに行ったことがなかった2人。「いいなぁ……」なんてテレビを観ながら呟いた彼女の言葉に今回のデートに採用したのだ。

「ば、ばぁうくん、見てっ！あめがいっぱい……！」
「あぁ、フルーツ飴ね。まひとが好きなやつじゃん」
「すごくキラキラしてるね……！」

　そう言う彼女の瞳の方がキラキラしてるけど。なんてのは言わず「そーだねー」と一緒の目線になって楽しむ。

「どれか買う？」
「で、でもあっちのかき氷も美味しそうだし……、」
「あれ？そんな食いしん坊だったっけ、お前って」
「だって……、お祭り初めてだから、楽しくて……」

　ごめんなさい。と変なタイミングで謝る彼女。
　別に謝罪なんて求めていなかったのに、言わせちゃったそれをわざと褒める。

「謝るの上手だね」
「ごめんなさ、」
「でも調子乗りすぎ。いつまでも褒めて貰えると思うなよ〜」
「うっ」

　しゅん、と完全に落ち込んだ彼女を横目に定番のりんご飴を買う。屋台で買うと割高だがお祭り気分を味わえるからと言う理由で良しとする。

「はい。食べたかったんでしょ？」
「わっ……！」
「あとなんだっけ？かき氷？味はどうするの」
「赤いの。いちごがいい」
「ハイハイ、赤いのね」

　大事に持ったりんご飴といちご味のかき氷。
　赤い浴衣が映える2人が持てば、それさえもファッションに見えてくる。