水中恋歌／ばぁう (ページ12)

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　リン────。

　再び妖精の鈴の音が聞こえた時、辺りから泣き声が聞こえてきた。小さな男の子の泣き声だ。

「！誰か、……いるの？」

　ここで人と会うのは初めてだ。早く帰りたいあまり、声の方へと向かう。ばぁうくんに会えるのが1番良いが情報収集は欠かせない。

「っ、あの……！」
「え。……だ、れ」

　泣いている男の子に話しかけてみるとびっくりしたように振り返る。
　黒い髪に金色の瞳。2本のアホ毛がピョコンと動くその男の子。

(……この子の声……、ばぁうくんに似てる……)

　幼い男の子の声を出す時のばぁうくんにそっくりなその子。しかし、現実の彼はもう成人済みで小学生くらいの男の子ではない。

「っ、よ、妖精……！ばぁうくんは……？
　……あ、あれ？？」

　ここまで連れてきてくれた妖精にこれはどういうことなんだと問い詰めようとしたのにどこにも居ない。どうやら消えてしまったようだ。

「……お姉さんその歳で妖精なんか信じてるの？」
「なっ、……だって。いちゃったから」
「いちゃったって」
「……変なお姉さん……、あやしいんだけど」
「え。……そう、ですか？」
「いや。問いかけられても……」

　じーっと男の子を観察する彼女。やっぱりどことなくばぁうくんに似ている気がする。

(……親戚の子、かな？……でも私知らない子だ)

「なんですか、……じっと見てきて」
「あっ。ごめんなさい……」
「べつに、(謝って欲しかった訳じゃないけど……)」

　男の子に注意された彼女は直ぐに違う場所を向いてここから出られないかを見つけてみる。そんな彼女のことを今度は男の子がじっと見ていた。

「(なんで、……こんなところに人が……)」
「(……ココは、ボクの心の中のはずなんだけどな、)」

　意図も容易く踏み込んできた謎の彼女を見て変な気持ちになってしまう。初めて会う人なのに嫌ではなくて、寧ろ知ってる感覚すらある。

「(なんで入ってこれたんだろう……)」

　特に結界なんかを張っているわけではなかったが、こんなに心の中に侵入してくる人がいるのは不思議な事だ。

　それも初めて出会った人。