水中恋歌／ばぁう (ページ11)

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「あ、……あっちになにかあるって事……？」

　ビシッと妖精が指さす方向にはなんだか薄暗く、ここよりももっと寒そうだ。

(地獄の案内人……、とかなのかな。この妖精)

　地獄なら1度味わったことがある彼女。
　それと比べるとどっちが苦しいんだろう。なんてこの場で呑気な事を考えていた。

『！！〜〜〜っ』
「あ、行くのね、あっちに……」

　そんなことよりも彼女は早くばぁうくんを探しに行きたいのに、厄介なことに巻き込まれてしまった。素足のまま、冷たい地面をペタペタと歩いていく。不思議と凍傷はしなかった。

「ねぇ、……あっちに何があるの？」
『……〜！……〜！』
「……、」
「もしかしてばぁうくんの居場所、知ってるの？妖精」

　言葉は分からないが、その音となる鈴がばぁうくんと言ったような気がした。彼女だけの感覚だからきっと凡人が聞いても分からないのだろうが、妖精は彼女の言った通り彼の場所へと案内しようとしていたのだ。

『……！！！』
「わ、やっぱり。ありがとう」

　彼女がなぜばぁうくんのことを言っていると分かったのかは定かではないが、これも一種の愛のパワーと言うやつなのであろう。

「あなた、いい妖精」
『！！』
「早く会いたい、……どこにいるの？」
『〜！！』
「うん。……あっちなんだね」

　段々と話しているうちに妖精が何を言っているのか理解できるようになってくる。

(やった。これでばぁうくんに会える……！)
(きっと寒いよね、私、上着とか持ってたら良かったんだけど……。ちゃんと暖かい格好してるかな……？)

　大好きなその人が無事ならそれでいい。そう思いながら彼女は妖精が案内してくれる方へと進んでいく。

　辺りは暗く、先程よりも寒い。

「……寒い、……本当にここにばぁうくんがいるの？妖精」
『！』
「……いるんだ、……どこだろう」

　キョロキョロ辺りを見渡してみるものの幻想的な氷の壁しか今のところ見えない。天上はどうなっているか分からないけれど、氷柱みたいなものが何本も生えていた。

(落ちてきたら刺さっちゃいそう)

　慎重に歩を進め、とにかく彼を探す。