恋愛戦争／ KnightA (ページ12)

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⋆꙳꒰ঌ🎠໒꒱·̩͙⋆ ページ12

「待って待ってー」とまひとくんが彼女に声を掛ける。くるっと振り返った妹はやっぱり可愛かった。

　初めて会ったあの日とは違うけれど、それでもあの頃からAの印象はてるとくんの中で変わってはいない。ずっと可愛いままで、ずっと愛おしいままで、ずっと傍にいて欲しいのだ。

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「……」

　ぎゅっとてるとくんのお母さんの後ろに隠れたまま出てこない幼少期のA。初めて来た家と目の前にいる同い年の男の子に緊張をしてしまっていた。

　肩まで伸びた栗色の髪と少し垂れた瞳。白い肌よりも目立つ左腕の包帯。少し脅えた少女がこちらを見つめているそれが、てるとくんには絵本に出てくる天使のように見える。

「あらあら。ふふっ、……初めてだから緊張しちゃってるのね」
「……、」

　声は出してくれないが、小さく頷いた少女。てるとくんのお母さんは優しく頭を撫でている光景をみて幼い頃のてるとくんは不思議だった。

「おかあさん、この子は？」
「今日から一緒に暮らすことになった女の子よ」

　『一緒に暮らす』ということは家族になるということなのだろうか。こんな形で妹ができると思っていなかったてるとくんはキョトンとした顔をする。無理もない。いきなり連れてきてそんな事を言われたら対応に困ってしまう。

「ママの親友がね、遠くに行くことになっちゃって。この子を預かることになったの」

　母親の表情で読み取れる悲しい顔。子どもながらに深く聞いてはいけないような気がして、口を噤む。変わりに少女の方へと歩み寄りふわりと綺麗な笑顔で微笑んだ。

　春に咲く満開の桜のように綺麗な髪。見えていた緑色の宝石が目を瞑って微笑んだせいで消えてしまう。けれど寂しくはなかった。てるとくんの笑顔からとても温かなものを感じた少女は隠れることをやめて前に出てくる。

「かわいいね。おなまえなんて言うの？」
「Aちゃんって言うのよ。……今日からウチの家族になるの」
「ぼく、てるとっていうんだよ。よろしくねAちゃん」
「……うん。……てるとくん。よろしくね」

　その日初めて見た笑顔に心がぽかぽかした。

　すごく小さくて可愛い子。急に出来た妹に実感が湧かなくて、……でも僕も同じくらい小さかったからすぐに仲良くなったりなんかして……。