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マツノ先生はもう何十年も働いているベテランの先生。
そりゃあ一番忙しい年長児さんに行ってもおかしくない。
でも、ナオト先生はちょっと意外だな……。
数少ない男の先生。去年は三歳児を担当していたはずだから今年もそうなのかと思ってた。
もしかしたら今年はランダム性が強い……？
「年長さん『ばら組』。担任、A先生」
「え────」
「副担任キコ先生」
パチパチパチパチ。
先程と同じように耳には拍手が届くのに心はざわめいていた。
人数が多い為、二クラスある年長児さん。
そのうちのひとつが私……？
え、私？
な、なん、なんで私……？？
「大変でしょうが、頑張ってくださいね」
思いっきり私の方に視線を合わせながらふわりと綺麗に微笑む園長先生。もう私だけに向けられたような言葉だ。
「次に年中さん『すみれ組』。担任────……」
三歳児までの担任、副担任が呼びあげられる中、最初に呼ばれてしまった私は若干頭がスペースキャットになりながら、メモをとる。もう、私すら分からないような字。
「────以上となります。今年も先生たち皆で力を合わせて頑張っていきましょう」
「はい────！」
ぺこりと一礼して園長先生がその場を立ち去った後、再びホールにはざわめきが広がる。
「はぁーーっ、緊張しましたねっ」
「毎度の恒例行事なんですけどねぇ」
「わっ、わたしっ、三歳児……！ は、初めてなんですが、だっ、大丈夫でしょうか……っ、」
色んな声が広がる中、私はもう一周回って変に冷静になってしまった。
「そういえばAさん、メモしてましたよね？」
「あっ、私もみたーい。自分のところだけしか覚えてなくって……」
年長さんの副担任二人が私のロルバーンを覗き込む。
文字の大きさもバラバラ。
動揺しすぎて改行すらも上手くいっていない文字列。
フリクションで書いていたというのに、擦って消さずに塗りつぶして所々消した文字。
「A先生、動揺しすぎじゃありません……？？」
「す、すみません」
まさかまさかで担任になるとは……！
それも年長児なんて、聞いてない……！！
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作者名：Stellar | 作成日時：2023年4月23日 23時
