【完】One Knight / KnightA + Y (ページ29)

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指名ページ29

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　先程の三〇分間を頭の中で再生する。

　私のことを一番初めに救ってくれまひとくん。
　ホストがどんなものなのか教えてくれたそうまさんに、
　小悪魔だけど私のことを心配してたてるとくん。
　案外心に傷を負ってることを見破ったしゆんさんに、
　私の素顔を暴いたばぁうくん。

　でも、一番安心出来て、またここに来たいと思えたのは最後に担当をしてくれた紫色の彼。

「あの……、ゆきむらさんを、お願いします」
「ゆきくん、ですね。かしこまりました」

　ドキドキ。
　まだ胸が加速している。

　何とかその気持ちを押さえつけながら目を瞑っていれば、ちゅちゅくんが「ふふっ」と笑う。

「ゆきくんとの時間が一番良かったのぉ？」
「あ、いや、そのっ、ドリンクのお礼を、言いたくて」
「そっかぁ。ゆきくん、喜んでくれると思うよぉ〜。あぁ見えてお姫様に優しいからぁ」

　それは、たった五分でも伝わるほど納得出来る。言葉一つ一つが優しくて、とても温かいのを感じた。

「気に入ってくれた？また、来てくれる……？」
「えっと……、」
「僕、また。アンタに会いたいな。僕はホストじゃないから皆みたいに直接アンタを喜ばせるなんて出来ないし、指名もしてもらえない……。
『会いたい』なんて、ほんと、僕のわがままなんだけど……、」
「ちゅちゅくん……、」
「あは、……。ごめん。
僕、知らない内にアンタの事、気になっちゃったみたい……、あはは、」

　まるで失恋でもした時のような言い方に胸が苦しくなる。確かにホストではないちゅちゅくんは席について話す時間はなかった。でも、この子も今日私を救ってくれた内の一人だ。

　そのお願いを自然と叶えたいと思う。

「また、また来るよ。ちゅちゅくん」
「えっ！ほんとぉー？えへ、あ、ごめんね……？なんか嬉しくなっちゃってぇ、」

　いや、可愛いかよ。
　というか絶対にちゅちゅくんはホストの方が人気出るのでは。

　そんなことを思ってると嬉しそうにしながら「ゆきくん呼んでくるから待っててねぇ〜」と可愛らしい黒服くんは足早にその場から離れていった。

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