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初めて飛び出てくる単語を繰り返しながらもう一度名刺に目を落とす。TwitterとLINEのIDが載ってる。きっとこれもプライベートのものではなくて『源氏名』の『てるとくん』という名前を使って連絡をしている番号なのだろう。
詳しいことは分からないが、私がいつも取引先と名刺交換をするアレと同じならばきっとそうだ。
乾いた喉を潤す為にグラスに触れた時、開いた左手にちょん、っとてるとくんの指先だけが当たる。
「っ、！？」
なに。何事。なにが起きてるの、なんでそんなに平然とした顔でこっち見てんの、はぁ！？ なっ、なんなのホントにドキドキさせる天才か……！！？
ホストならば大事なことなのかもしれないがパンピの私にとっては意味がわからないほどこの状況に対応力がない。言葉を詰まらせてばかりでもう瞬きをすることしか出来ないのだ。
「だから。沢山呼んでほしいな？ かわいいお姫様にいっぱい、名前呼ばれたい。ねぇ、呼んでみて？」
「えっ」
「……もう、名前、忘れちゃった？」
そうまさん程大胆に触れてる訳では無いのに、当たった一箇所だけに熱が集中してしまう。まだ頼んだお酒は一口しか飲んでいないのに、もう酔ってしまったのかと思うくらいそこだけが熱い。じんわりと広がっていく熱と同時に触れる面積も増えていく。
指先から上に、すすす、っと。手の甲に登る頃には二本に増えた指が動く度くすぐったさと恥ずかしさで顔に熱が集中する。
「あ、のっ、」
「……」
「まっ、て。ち、ちか、」
「……」
「っ、てるとくん……！」
「ふふふ。うん、なぁに？」
名前を呼んだ瞬間に触れていた全てが離れる。とても呆気なく離れていったてるとくんはただ名前を呼んでもらいたかっただけの様で、それ以外の目的は何も無かったようだ。
なんなの、この天性の小悪魔感は。見かけによらず意外と肉食系だったりするの……！？ 軽率にドキドキしちゃうからやめて……！！
「名前忘れられたのかと思っちゃったよ」
「さ、流石に覚えてます……」
「ありがと。でもちょっと残念だな」
「？ なにが、」
飛びっきりの可愛い笑顔。
さっきまで小悪魔だと思っていたフェイスが一気に天使になる。
「真っ赤でかわいいお姫様の顔、まだ見てたかったな」
「！？？」
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作者名：Stellar | 作成日時：2022年10月23日 12時
