【完】One Knight / KnightA + Y (ページ21)

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　あぁ、この人なら分かってくれるのかもしれない……。そんな気持ちが浮上してくる。

　ばぁうくんだけじゃなくて、今日初めて出会った人全員。
　私の本心をちゃんと聞いて、見てくれている。

　彼氏の前では全部友達の言う通りに動いていたから。アドバイス通りに動いていればちゃんとした正しい恋ができると思っていたのだ。でも、苦しいだけだった。我慢我慢がまん。いっぱい頑張って、繋ぎ止めるのに必死だったのに、ここに来て全部それが馬鹿みたいだと感じる。

　パッと離れてしまった彼の体温。もうおしまい……？そう思ってしまうほど、この時の私はもうホストという彼らに足をつけて沼りかけている。

「はい、お試しは終わりー。もっとイイコトして欲しかったら、ちゃーーんと俺のものになってからね」
「お、れのもの……」
「そ。……俺だけを見て、俺だけに素直で、従順で。独り占めしたくなっちゃうような子になって？
そしたらもう一生今の苦しみを思い出す事ないようにしてあげるよ。はははっ」

　こりゃ人気が出て当たり前だ。尽くしたい願望がある女の子には絶対にウケがいい。そして何よりも特別を大事にしているばぁうくんはこの段階で見極めているのだ。

　『もの』になれるかどうかを。

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　カツカツ、と少し厚めのある靴の音が近づいてくる。ばぁうくんをこのまま見つめていたら取り込まれてしまいそうだと思った私はその音の方へ視線を向けた。

「うわ、まって、ばぁうさんの次かよ。最悪」
「あ？なんだよ、最悪って」
「最悪じゃん、だって。絶対ハードル上がってるし、一番最後ってだけでも嫌だったのに。ちゅちゅがどうしてもって言うから」

　な、なんというか。また五人とは全然違う系統の男の人が出てきた……。この人が最後に担当してくれる人……。

　まだ話していないから分からないが、なんだかこんな気だるげでいいの？気だるげホストでいいの？？気だるげ系で売ってるの？？？

「ちゅちゅに言われたなら頑張れよ」
「頑張らないなんていってません」
「あ、そうだ。今度会う時は俺だけのものになれよ？お前。
他の男見てたら殺しちゃうから。あはっ」
「っ、」

　特大な爆弾を落としていったばぁうくんと深々とため息をつく気だるげ系ホスト。

　拒否権なんて用意してないじゃないか。それなのに、それでもいいかななんて思ってしまう自分がいた。

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