❤︎ ページ24
店員の枠を越えて話してくる目の前の女に愛想笑いで対応する。正直めんどくさい。どっか行けよと申し訳ないが心の中でそう思っていた。しかし、先程も言った通り平日の昼間。ばぁうくん達しか居ない店内で店員さんを振りほどくなど至難の業だった。
「かっこいいし、彼女さんの買い物にも着いてきてくれるなんて羨ましいです。さっきも服選んでましたよね？いいなー」
ペラペラと。これが営業トークなのかと疑ってしまうほどプライペートな所まで踏み込んでくる店員さんを完全にスルーしようとした時シャッと試着室のカーテンが開く。
「いいじゃん。似合ってる。他のも着てみた？」
「うん。こっちの黒のブラウスは、ほしい。けど、スカートは少しサイズキツくて……、」
「デザインは？好き？それSだしワンサイズ上の持ってきてもらえば買えるけど」
「デザインは、すごくかわいい。ばぁうくんが選んでくれたから」
「ん。じゃあ、すみません、コレ買うんで。あ、こっちのはワンサイズ上ので」
2人の空間に入っていけなかった店員さんは遅れて「は、はい、かしこまりました」とレジの準備をする。せっかくいい雰囲気だったのにと悔しがる店員さんはチラリと彼女を見る。
大人しそうな女だと思ったから簡単に彼氏を取れると思っていたのに。なんて思いながら見てみれば、彼女は泣きそうな顔で店員さんを睨みつけていた。『取らないで』と訴えるその瞳が予想以上に可愛くて、店員さんはさすがにダメだとばぁうくんを諦めた。
「お前着替えきな？先支払いしてるから」
「うん、わかった」
ばぁうくんの前では柔らかい表情だが、店員さんに対しては冷たい視線を送ってしまった彼女。決して嫉妬や怒りなどではなく、奪われてしまうのが怖かったからそれを隠すように睨みつけてしまった。
「あ、他にほしいのは？」
「キス」
「はっ？」
「あ、いや！えっと、大丈夫。なんにも、ない」
「着替えてくるね」と言った彼女は後ろを振り返り、試着室へと戻っていく。
何に対してヤキモチを妬いたのか直ぐに分かったばぁうくんはカーテンを閉めるついでに彼女の肩をトントン叩く。不思議そうに振り返った彼女の唇を一瞬だけ奪った後、親指で下唇をなぞった。
「早く着替えなね」
そう言い残してばぁうくんはレジへと向かう。取り残された彼女はさっきの店員さんとのやり取りが吹っ飛ぶくらいには、一瞬のキスだけで満足してしまった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 102人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
夜空(プロフ) - うわぁ、彼女ちゃんが可愛い…！！作者さまの書かれる彼女ちゃんとばぁうくん可愛いが過ぎます。どこまでも素直で、天然で可愛いばうカノちゃんが好きです…！ (2022年6月17日 16時) (
レス) @page13 id: 2ceb4af9d4 (このIDを非表示/違反報告)
なわわ(プロフ) - すごく楽しみです！頑張ってください！ (2022年6月13日 21時) (レス) @page1 id: f08a93420d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Stellar | 作成日時：2022年6月13日 17時
