❤︎ ページ17
置き去りになったオンナはただ心が虚しかった。もっと綺麗になって利口になってばぁうくんの役に立つ女になれば、昔のように愛してくれるんだと思っていたからだ。それなのに、あんな地味で冴えない彼女の方がいいという。
悔しい。
あの子は何も持っていないのに、自分の1番欲しいものを奪っていく。
こんな雨の日に出ていった時、ばぁうくんは自分を追いかけてくれなかったのに、今の彼女は追ってもらえる。
なにが、何が違うって言うのよとその場で崩れて泣いたオンナは心の中で何度も彼女を刺し殺した。
「っ……、待てっ、」
普段運動なんてろくにしていない彼女と、ライブの為に基礎を鍛えているばぁうくんとじゃ体力の差がある。増してや男と女だ。雨で走りにくい事もあってすぐに追いつくことが出来たばぁうくんは彼女を見つけて手首を掴む。
こんな時ですら命令に背くことの無い彼女はばぁうくんの声でピタリと動きを止めた。
過去のオンナとは決定的に違うところ。『ばぁうくんが言ったこと全部真に受けちゃうよ』とオンナが言った通り全てを真に受ける彼女だから良かった。ばぁうくん以外の言葉をシャットアウトして1つにしか集中出来ない彼女だから良かったのだ。
俺なしじゃ生きていけない。
そんな弱弱しい彼女が好きで、自ら自分の手に落ちてくるような馬鹿な目の前の彼女が、好きなのだ。
「なんで急に逃げたわけ」
「……ばぁうくんの、邪魔になると、おもったから」
普通なら『嫉妬』の感情が真っ先に出るものだ。先程のオンナもそう。けれど彼女は自分の感情よりも先にばぁうくんを第1に考えた答えを出す。
まだ揺れている瞳。
頬を伝う雫。
雨なのか彼女から出た涙なのかわからなくなるからやめて欲しい。なんて思いながら冷たい彼女を引き寄せた。
「邪魔だなんて、俺言った……？」
「い、われて、ない。でも、私、あのまま、あそこに居たら────」
壊れるとおもった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 102人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
夜空(プロフ) - うわぁ、彼女ちゃんが可愛い…！！作者さまの書かれる彼女ちゃんとばぁうくん可愛いが過ぎます。どこまでも素直で、天然で可愛いばうカノちゃんが好きです…！ (2022年6月17日 16時) (
レス) @page13 id: 2ceb4af9d4 (このIDを非表示/違反報告)
なわわ(プロフ) - すごく楽しみです！頑張ってください！ (2022年6月13日 21時) (レス) @page1 id: f08a93420d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Stellar | 作成日時：2022年6月13日 17時
