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「私に構わないでください。先に進んで、どうぞ」
その時、ちょっと感動したかもしれない。「構うな」以外に喋れんだってさ。でもそれとこれは別。つーか、やっぱり一々付き纏われるのは嫌に決まってるでしょ?ストーカーを受け入れる奴なんかどこにいるってのよ。
あたし走ったよ。廊下を走るなとか、この際知ったこっちゃないし。でもさ、東条って意外と足速いんだよ。気がついたら追いついてくんの。怖くね?本当に妖怪かなんかかと思ったもん。
ギョッとして、つい足を止めそうになったんだ。でもいけないと瞬時に思い直して、また足を出そうとした。そうしたら足がもつれてつんのめってさ、派手に転んじゃったんだ。
廊下の真ん中で。何もないところで転ぶなんて、本当にあるんだな。
慌てて体を起こしたら、視界の端に足が映った。東条があたしの横で、ピタッと足を止めたんだよ。
無表情の顔は前を向いたまま、視線だけを動かしてあたしを見下ろしていた。
その時にはもう、ソイツがただの人間なんかじゃないみたいに思えて、……正直、怖くて仕方なかったよ。
どうせ、またまともな返答なんか返ってきやしない。そう思いつつ、自分でもびっくりするくらい震えた声で聞いたんだ。
「なんで、あたしに構うんだよ」
東条は一拍置いてからしゃがみ込み、あたしと視線を合わせて言った。
「貴女が私だからです」
意味は……分からない。でもそれ以来、東条は学校に来なくなった。なんでかは知らない。あたしに会いたくなくなったとか、学校が嫌になったとか、そういうんじゃないと思う。てか、自分から付き纏っておいて嫌になったとか言われたらはっ倒すっての。
けど、追われた時のことは今でもちょっと引きずっててさ。たまに学校の廊下とか、外歩いてる時に思い出して反射的に振り返っちゃうんだよね。なんか、急に背中にぞくって悪寒が走ることがあるのね。
どっかで聞いたけど、人間って背中に目が無いじゃん?だからその分、背中で″感じやすい″んだって。ほら、″背筋が凍る″とかいう言い回し。あれとかも、そっから来てんだって。霊的なものとか、何かしらのオーラとか分かっちゃったりすんだよな。
おい、誰だよ今笑ったの!このタイミングで何が面白いのか知らないけどっ……笑ってない?いや、確かに「ふふっ」つって笑ったでしょ!違う?……ホント?怖……。
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作者名:リ | 作成日時:2022年8月28日 21時