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「いい加減、気づいてないフリはやめたら?」
『……なんの話?』
「嘘つきだね。」
要望通りに歌を歌っていただけなのに、喜八郎は思いもしなかった言葉を言った。それを誤魔化そうとすると、真剣な顔でこちらを見る。
「それが術なのかそうじゃないのか知らないけど、皆からの普通じゃない視線に気づいてるでしょ。その視線の意味も。」
『……一体、何を…』
「何か避けてる?」
避けてる。その言葉を聞いて私は図星をつかれたように視線を逸らした。さっきまで見ていた大きな目が、何もかも見透かしているように思えて恐ろしくなった。
……本当は気づいている。
あの日から土井先生と利吉さんの私への気持ちが変わったことも。学園で過ごしていく中で生徒たちの態度も変わったいることにも。
気持ちの変化は私が望んでいたことだ。でも、違う方向に進んでしまった…
別に惚れさせようとかいう気は全然なかった。魔法もかけていない。じゃあ、何故彼らが私に特別な感情を抱くのか全く理解が出来ない。
『分からない……』
「何が?」
『人間が…心が……私には何も理解出来ない。』
「……そうなの?ぼくには分かっているように見えるけど。」
『分かんないよ…』
「ふ〜ん…そう。」
私が絞り出した声は、喜八郎によってサラッと流される。お前が聞いたんじゃねえか、とも思ったが、その軽さが今の私にはちょうど良い気がして嫌な気はしなかった。
私は誰かに好かれることが怖い。
贅沢な悩みだと思われるかもしれないが、好かれることも嫌われることも大差ないと思うんだ。
だって、ようは自分じゃない他人に自分のことを勝手に評価されてるってことでしょう?そんなの怖いじゃん。
『喜八郎は人から嫌われるのと好かれるの、どっちがいい?』
「どっちでもいい。人からどう思われようとぼくには関係ないから。」
『そっか。』
悩むことなく言ってのけるその姿が羨ましい。なんだか、私がぐちゃぐちゃ考えていたことが馬鹿らしくなってきた。
そっか…どうでもいいのか。
今まで、私に向けられる好意は、私の歌に向けてなのか私自身に対してなのかとか。周りの期待に押しつぶされそうになったこともあった。
でも、そんなこと本当は全部どうでもよかったのかもしれない。
『ねぇ、喜八郎。』
「なぁに?」
『ありがとう。』
「……どういたしまして?」
私は軽くなった心で、純粋に微笑んだ。
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櫻井あよ(プロフ) - すずはさん» 私は、Kという名前です。フォローよろしくお願いします〜、 (3月28日 16時) (レス) id: e8ac715e1d (このIDを非表示/違反報告)
すずは(プロフ) - Megumiさん» コメントありがとうございます。こちらからDMの方送らせていただきました。確認お願いいたします。 (3月27日 15時) (レス) id: 2f649bb5f7 (このIDを非表示/違反報告)
すずは(プロフ) - 櫻井あよさん» コメントありがとうございます。よろしければ、Twitter登録名を教えていただけると幸いです。アカウントが確認でき次第、フォローさせていただきます。 (3月27日 15時) (レス) id: 2f649bb5f7 (このIDを非表示/違反報告)
Megumi(プロフ) - Twitterの方フォローさせていただきましたMegumiと申します。パスワードを教えていただきたいです!よろしくお願いします (3月27日 12時) (レス) @page50 id: 2b7b46d822 (このIDを非表示/違反報告)
櫻井あよ(プロフ) - Twitterの方をフォローしました、DMを送りたいのでフォローして欲しいです。 (3月26日 12時) (レス) id: e8ac715e1d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:すずは | 作成日時:2022年9月14日 12時