あまいおもいとにがいおもい ページ39
脳裏にふわりと浮かんだその顔は。
…他でもないトンきゅんで。
「ごめん…言ってくれてありがとう。でもごめんなさい」
すぐに察したらしい彼は柔らかく微笑む。
「…いいんです。薄々知っていたんです。…応援、してますね」
失恋したというのに人を気遣えるなんてすごい。
私だってわからないほど馬鹿ではない。
その事実に気が付くと顔に熱が集まる。
アスヒ君みたいに、あんな素敵な告白はきっとできないけれど。
それでも、この気持ちを伝えられたら。
甘く体中に流れた感情は私をすぐに埋め尽くした。
「アスヒ君の応援なら百人力だよ!…よければこれからも、友達でいてね」
もちろんです、と天使のような笑みを向ける彼に別れを告げて屋上を出る。
トンきゅんはどこにいるだろうか。
心臓はまだうるさい。
アスヒ君に告白してもらえたのだ。
とんでもなく、周りの女子から羨まれることだろう。
そう考えれば私はなんて傲慢で強欲なことか。
愛と欲は酷似している。
それなら甘さを飲み、苦さを溶かし。
恋に溺れてしまいたい。
・
・
「……ッ、応援なんて、出来な、いです…ッ」
本当は、告白なんて失敗しろと思ってしまった。
アスヒだって聖人ではないのだ。黒い感情だって、あるに決まっている。
それでもあんな表情を見たから。
あんな表情をさせうるのがアスヒではなかったから。
ぐっと一時的に飲み込んだ。
しかし一人になれば決壊するもので頬を涙がとめどなく伝った。
綺麗な星が彼を見守る。
その星すら見えないほど、彼はただ一人泣き続けた。
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こひな(プロフ) - さとう。さん» ありがとうございます〜!ミカグラもうずいぶん前の作品なのでこうして面白いと言っていただけてすごく嬉しいです!ありがとうございます!!! (2018年11月15日 21時) (レス) id: f35a13aa1c (このIDを非表示/違反報告)
さとう。(プロフ) - 面白いです、!更新楽しみにしてます! (2018年11月15日 21時) (レス) id: a9ffbbba50 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こひな | 作成日時:2018年8月25日 1時