【18】SideM ページ21
「あいつオレん家の丁度真上に住んでんだけどよ。メチャクチャうるせぇんだよな。怒鳴っても聞かねぇし。まぁオレもデケェ声出すことあるから何とも言えねぇけどよ」
「あそこ姉弟ッスよね確か。弟の方オレらと同い年なんで何回か話したことありますけど、今なンか荒れてるみたいッスよ」
「姉の方も変な男に引っかかってると思ってたけどな」
「やー、でもあの家で一番ヤベェの母親ッス。目合ったら姿見えなくなるまで粘着されるんで」
本人からではなく、人づてに聞いてしまったことに発芽したての罪悪感。
多分聞くべきではなかったことなのだろうとは思うのだが、聞いてよかったと思うことばかりでイヤになる。
それと同時に、自分が良かれと思って指摘したことが全て裏目に出ていたことも理解した。
彼女の家は、“悪い意味で”有名な家だったらしい。
荒れ始めたのは父親がいなくなった8年前ごろから。
深夜から朝方にかけて女の怒鳴り声と酒瓶の割れる音、それから子供の泣き声が聞こえると有名だった。
何度か警察や児童相談所の人間が訪問したらしいが全て突き返され、何より子供たちが虐待を否定する為手出しのしようがなかったと。
『Aは飯とか誰が作ってんの？』
『うち？うちは日によるかな。私が作れそうなら作るし、難しそうならカップ麺で済ませちゃう』
何気ない会話だったと思う。所謂雑談と言われたりするやつ。
ただ、小さく、特別おかしなことを言っているわけじゃないのに、小さな棘のように引っかかったような違和感を感じていた。
話を聞いてすべて合点がいく。
治っていたはずなのに増えていた生傷の理由も、なんとなく。
いつも諦めたみたいに笑うのはきっと癖だ。
「…三ツ谷、なんかダリィこと考えてんだろ」
「お、わかってんじゃねぇか。ちょっと用事あンだ」
「カチコミなら付き合うぜェ」
「いらねぇ。お前が来たら下の階に住んでるやつらに迷惑かかりそう」
「いらねぇって言われても家がそこにあるからついていく」と遊ぶ気満々の二人を巻くことも出来ず、その団地とやらに向かう為にインパルスに飛び乗る。
そもそも彼女が過剰に怖がっていたのは、プライベートな部分に踏み込まれることくらいじゃないのではないか。
オレは、彼女が今何をされているかなんて知らない。
それでも今行かないと、きっと一生後悔する。
『私は、君といると息がしやすかった』
だったらずっと、オレの隣で呼吸してくれたらいい。
ガキは話を聞かないんだ。
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花蘭(プロフ) - 全然読みにくくなんてなかったです。言葉１つ１つがより作品に引き込ませてくれて、とても感動しました。素敵な作品をありがとうございました！！ (2021年8月31日 17時) (
レス) id: 7a9bcca966 (このIDを非表示/違反報告)
やま - 最高でした。素敵な作品をありがとうございます。 (2021年8月30日 21時) (レス) id: 8661ddee6b (このIDを非表示/違反報告)
あおちゃん(プロフ) - 素敵な作品をありがとうございます (2021年8月29日 17時) (レス) id: 5ff916f516 (このIDを非表示/違反報告)
優菜(プロフ) - とりま泣きました。ありがとうございます (2021年8月29日 5時) (レス) id: f74092ff06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：晴海 | 作成日時：2021年8月26日 16時
