◇ ページ34
立たないと、今すぐ逃げないと。
逃げたってムダだと分かっているのに、何故かこの場から逃れたいと思ってしまった。
もし今日は無事に帰れても、いつかは呼び出されるのに。
呼び出しに従わなかったら、何十回何百回と電話して、手紙を寄越してくるのに。
「今日なんで来なかったわけ？」
ビクッと肩が跳ねる。
足音は止まって、すぐ後ろから声が聞こえたことに、緊張が最高潮まで高まる。
どうしよう、逃げたいのに動かない。
焦燥感ばかり募るだけで、何一つ打開策が浮かばなかった。
そりゃそうよ、ずっと悩んできたんだもの。
今まで何度も泣いて、考えてきた。
虐められないように、"普通"の生活が送れるように。
それでも何も変わらなかった。
キュッと胸が痛んだ。
私が上杉君に放った言葉と罪悪感が蘇って、蝕んでいく。
私、いつまで怯えてるんだろう。
先のことを怖がって、何もやり返さずに言われるがまま。
何が傷つかない方法だ。
素直に従って私が耐えれば…って結局、逃げてるだけじゃない。
「私はあなたの人形じゃない」
ポツリと、か細い声が自然と零れた。
なんだ、私だって言えるじゃない。
引きずっていた鉛が、少し軽くなった気がする。
あの頃の私とは違うんだ、って胸を張れる気がする。
「何も抵抗してこなかったからって、舐めないで」
声は震えていた。
それでも、今まで殻に閉じこもっていた自分が、やっと前に進めた。
後が怖いだとかどうでもいい。
電話だって手紙だって、全部無視してやればいいんだ。
そう決めて、振り返った瞬間だった。
パァン＿＿＿
乾いた音がした。
何が起こったのか、気づいたときには頬がヒリヒリと痛んでいた。
「お前、いつそんな偉くなったの」
立ち上がりかけていた体が押されて、コンクリートの地面に頭を打つ。
「大人しく遊ばれてろ、っ言ってきたよね？
拒否権あると思ってんの？」
グッと、首元を掴まれた。
理解が追いつかないうちに、馬乗りになられて、両手で首が締めつけられる。
「っ…！」
息が苦しい。
ぶつけた頭が痛い。
あっという間に恐怖が襲ってくる。
「や、やめ…」
首周りにある手を剥がそうとしても、びくともしなかった。
彼は周りの男子よりも華奢な方なのに、力では敵わない。
息が吸えない。
苦しくて、悔しくて、怖くて目の前がぼやけてきた。
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小町(プロフ) - 美希さん» 最後まで読んでくださったんですね(笑)ありがとうございます。シリアスな話がすごく書きやすいので暗めのストーリーが多くなりがちなのですが、気が向いたときに読んでくださると嬉しいです(^^) (2023年3月21日 19時) (
レス) id: a89f3eeedf (このIDを非表示/違反報告)
美希 - 最初は、これは暗めのやつだな、と思って読む気が進まなかったんですけど、最後はもう泣きました。最高でした。 (2023年3月21日 13時) (レス) @page50 id: cf88aeaf8b (このIDを非表示/違反報告)
小町(プロフ) - 秘月さん» 久しぶり！完結まで読んでくれてありがとう〜！上彩の魅力に気づいてくれたようで嬉しい笑笑 ネタ切れ中だけど何か書きたい気分だから、また書いたら読んでほしいな笑 (2023年3月5日 17時) (レス) id: a89f3eeedf (このIDを非表示/違反報告)
秘月(プロフ) - こっちゃん〜！！ルーーなです。本当に、完結おめでとう。このお話を作った頃からずっと読んでたから完結したのはちょっと寂しい気もするけど、とてもおめでたいです。美彩推しだけど上彩ハマりそ〜、、これからもお話楽しみにしてるね！ (2023年3月5日 13時) (レス) id: 269ba6d569 (このIDを非表示/違反報告)
小町(プロフ) - 桜＠ひなたさん» あとラスト一介更新で完結させる予定です。そちらも楽しんで頂けたらと思います！ (2023年2月14日 21時) (レス) id: a89f3eeedf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：小町 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/hopwe021/
作成日時：2021年7月27日 9時
