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飛び回る火の粉はまるで蛍の様_1 ページ2

ふわふわ、ふわふわと火の粉があたりに飛び散る。
それは蛍の様に美しく、しかし蛍のように人を癒す物ではない。
その火の粉が飛んでいる間は、何かが燃えているのだ。
今燃えている両親と祖父母、その他大勢のモブ達が泊まっているホテル。
姉さんは無事に避難させているので安心だ。
これだけでもスッキリしたのだが、アイツらの悲鳴が聞こえない事が非常に残念だ。

(…こんな事になったのも自業自得なんですよ。)

そう心の中で呟き、ああもう自分はとっくの昔に人の心を失っているんだなと自虐的に笑う。
その姿を誰かが見ていたのなら、きっとさぞ猟奇的に見えたのであろう。
しかしそんなことはどうでもいい。自分と姉さんだけが生きていればもうどうでもいいのだ。
姉さんはアイツらとは違う。自分よりも優れていながら、落ちこぼれである自分にも優しくしてくれた。まさに生きる価値のある人間だ。

「離してっ、離してください!お父さんとお母さんがまだ中に…!」

自分の少し前では姉さんが泣きじゃくりながら燃えている建物の中に入ろうとする。
しかしそれが許されるわけがなく、周りの人に止められている。
その姿はまさに、悲劇のヒロインとでも言えよう。

たまに姉さんのそういう所が理解できない。
自分で言うのもあれだが、自分は人よりも頭の回転が速く、大体の人の思考は完璧に想像することができる。
もちろん姉さんの事も…だ。
だが今の姉さんの思考はまったく想像がつかない。
なぜあんなクズの擬人化のような者達を泣きじゃくりながら助けようとするのだろう。
もう手遅れだと分かっているハズなのに。
それでも、たとえもう助からないとしても救いたいという思いがあるのだろうか。
やはりそこが自分と姉さんの絶対的な違いだろう。
今は自分が火を付けたから火事になるし家族が助からないということは分かっていたが、もし自分以外の誰かが火を付けたとしたら、自分はアイツらの事を想いながら泣きじゃくり、助けたいと思うだろうか…。
いや、思わない。絶対に思わないだろう。
それは自分が幼い頃から愛を貰えていないだけであり、姉さんのその行動や思考は正しいのだろう。

(ああ、こんな状態じゃきっと誰も祝ってくれないのでしょうね。)

愛用している腕時計が、12時になった事を指す。
昨日までは16歳、そして今日から17歳になった。
記念すべき17歳の誕生日に、親と祖父母を殺しました。
…なーんて、そんな笑えない冗談は通じないでしょうね。

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作者名:ほぴろー | 作成日時:2021年1月17日 10時

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