甘味処で_1 ページ2
桜が咲き誇る木のすぐそばの小さな甘味処、そこには一人の奇妙な客がいた。
見る人を惹きつけてしまう真っ赤な血のような髪、牧師のような珍しい服装、周りを寄せ付けないような冷たい雰囲気、そして何より痛々しい顔の縫い痕。
あまりにも風変りな見た目のため、周りの客はおろか店員さえも遠まわしに彼を眺めていた。しかし、彼らはその男が人間ではなく現在脅威とされている妖であるということは知らないのだろう。
その男は周りから怖がられていることに気づいていないのかなんともないような顔でモグモグとあんみつを頬張っている。そしてそれを完食した後にみたらし団子を三本頼んだ。どうやらここで食べるのではなく持ち帰って家で食べるようだ。周りはやっと変な人物が帰っていくと安心したのもつかの間…一人の子供があろうことかその男にぶつかってしまったのだ。
さらになんと、ぶつかった際に子供が持っていたみたらし団子は彼の服に見事なシミを作ってしまった。
男は無言で子供を見下ろしている。子供はそのあまりの怖さに今にも泣きだしてしまいそうだ。男は子供に向かって手を伸ばしていく。それに気づいた親は今すぐ謝ろうとするが…
「すみませんでした、少年。服は汚れていませんか?」
そう声をかけると子供の頭に優しく手を置いた。あまりにも予想外の行動に張本人の子供だけでなく周りの大人たちまで唖然とする。
そして無言な子供を不思議に思ったのか、男は持っていた自分のみたらし団子を子供に手渡す。どうやらお詫びのようだ。
お礼を言った子供に少し笑みを返すと男は黙って甘味処から出て行った。
続く お気に入り登録で更新チェックしよう!
最終更新日から一ヶ月以上経過しています
作品の状態報告にご協力下さい
更新停止している| 完結している
←初めに
1人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ほぴろー | 作成日時:2021年8月4日 21時