Self-sacrifice ページ36
阿部は苛ついていた。
今回の作戦のために欲しい情報があるのに、それを握る男の口を割らせる事が出来ない。
ぶっちゃけ依頼自体は大した事ないのだが、最近の仕事がどれもスムーズに出来ていたせいで、こんな些細な事でストレスが溜まっていた。
最初に送り込んだ渡辺は失敗した。相手が男だったからかどうも上手くいかなかったようだ。
次は口が上手い深澤を送った。しかし相手と距離は詰めたものの、肝心な情報は引き出せなかった。
阿部が欲しい情報は彼からしか得られない。しかしこれ以上数を打てばそろそろ怪しまれる。送ってもせいぜいあと一人だ。
喋りの上手い向井を送るか。いや、あいつはそう見えないだけで実際人見知りだ。若干不安が残る。
自分が行くか。それでもいいが、正直他にも仕事があるので行きたくない。
考えた挙句、阿部が選んだ最後の一人は目黒だった。彼は自力で情報を集めていた事もある。仕事はできる。
こうして阿部は目黒に仕事を頼んだ。阿部は信じていたから何も言わずに仕事を頼んだ。
彼は「何も」しない。そう信じていたから。
目黒は阿部の焦りに気づいていた。
だから、何としても情報を引き出して来ないといけないと思った。
だから、自分が選ばれたと思った。「そういう意味」だと思った。
目黒は阿部の指示を受けてとあるクラブに来ていた。
目的の男はカウンターで酒を飲んでいる。連れがいる様子は無い。しばらく観察していたが女を口説く様子も無い。それで勘づいた。
目黒はやがて男に近づき、彼の隣で酒を頼んだ。
同年代でもある彼は自分の「得意分野」かもしれない。阿部はそれをわかって自分を送り込んだのだ。なら。
mg「一人で飲んでるの?」
「……あんたも?」
mg「そう、ついさっき振られちゃった」
適当な思いつきを呟いてほんの少し匂わせただけだったが、男の目の色が変わったのがわかった。
＿＿ほら、「得意分野」だ。
mg「そっちはなんで一人なの」
「何でだと思う?」
mg「獲物を見つけるため?」
「わかってんじゃん」
mg「その割には釣れてなさそうだけど」
目黒が煽ると男は酒を一気に飲み干し、すぐに次を頼んだ。
気づかれないように目黒は口角を上げた。
＿＿いける。俺ならいける。
mg「……何? 怒らせちゃった?」
「別に」
mg「ふーん、」
「……何笑ってんだよ」
mg「別に?」
「……お前でも良いんだぞ」
目黒は思わず吹き出した。
＿＿なんだ、すっげえ簡単じゃん。
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長谷川遥香(プロフ) - 完結したけど続きでリクエストバージョンも見たいです！ (2022年1月3日 21時) (
レス) id: 3679b26edd (このIDを非表示/違反報告)
雷(プロフ) - ものすごくおもしろくて、一気読みもしたのに誤って低評価を押してしまいました…！本当は心からの高評価です、おもしろかったです！嫌な気持ちにさせてしまったらすみません…！ (2020年10月14日 22時) (レス) id: 02bdc07e91 (このIDを非表示/違反報告)
kjars8888888(プロフ) - やっぱアジさんの裏稼業が最高だな！！ (2020年9月21日 23時) (レス) id: 55f2f63f60 (このIDを非表示/違反報告)
mgrwtnb(プロフ) - 完結おめでとうございます！最後まで涙が止まりませんでした。これからも応援してます! (2020年9月17日 20時) (レス) id: 1e6ed00ec9 (このIDを非表示/違反報告)
ひな(プロフ) - 完結おめでとうございます。とても面白く、更新を毎日楽しみにしていました。これからも応援してます！ (2020年9月15日 22時) (レス) id: afba355943 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：怜
| 作成日時：2020年8月29日 15時
