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その日見舞いに来たのは阿部と佐久間だった。
二人は深澤が目を閉じる傍らに座り、深澤の顔を見ながら話していた。


sk「……こいつ何時まで寝てるんだろうね」
ab「とっくに目覚ましていいはずなのにね」


深澤が眠る振りを続けていると、二人の話題は昔話に移った。


sk「ねえ阿部ちゃん」
ab「ん?」
sk「あの時、なんで俺達拾われたんだと思う?」
ab「……どうしたの急に」
sk「なんとなく。ちゃんと聞いた事なかったなって思って」


二人の話を聞いている深澤は当時を回顧した。
阿部の情報屋としての手腕を買ったから。佐久間が単純に強かったから。
それだけではないと伝えた事は、そういえばなかったかもしれない。


ab「……佐久間さ、ふっかと舘さんに負けたじゃん」
sk「うん」
ab「その時……なんて言ったか覚えてる?」
sk「……え?」


あの時、最終的には宮舘の蹴りで佐久間は地面に叩きつけられた。
彼が意識を手放す直前、深澤が情報の入った封筒を奪おうとした時、佐久間の口から無意識に零れた言葉は深澤も覚えている。
その言葉を、マイクの向こうにいた阿部が聞き逃した訳が無い。


ab「……ごめん、阿部ちゃん」
sk「え、」
ab「佐久間、そう言ったんだよ」
sk「そうなの……?」
ab「そう。多分だけど……それを聞いたから、こいつは俺達を拾ったのかなって。勝手な想像だけど」


深澤は表情を変えないように必死だった。図星だったから。


sk「……確かに。ぶっ壊れた俺と、一人で支えてくれてた阿部ちゃんでしょ? こいつが拾いそうな二人だよねー」
ab「ははっ、自分で言うなよ。わかるけど」
sk「わかるでしょ!?」
ab「だって俺も……」
sk「え、何?」
ab「いや、なんでもない」
sk「えー何!?」


深澤の脳裏にあの頃の映像が流れる。
佐久間は言わずもがな、阿部だって助けてやりたいと思った。


《……佐久間に手出したらぶっ殺すからな》


仲間になると言った時の阿部の言葉を、あの孤独な目を、深澤は今でも覚えている。


ab「……でもさ、」
sk「何?」
ab「拾ってもらえてよかったよね」
sk「……うん。本当によかった」


急に話の方向が変わって深澤は動揺した。まさか、感謝される訳ではなかろうな。そう思ったのに。


ab「ま、ありがとうって直接言うつもりはないけど」
sk「んはは、俺も言わなーい」


__やめろよ。感謝されるような事なんてしてないよ。
唇を噛めば意識がある事がばれる。深澤は込み上げるものを堪えるために、布団の中で拳を握った。

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作品ジャンル:タレント
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長谷川遥香(プロフ) - 完結したけど続きでリクエストバージョンも見たいです! (2022年1月3日 21時) (レス) id: 3679b26edd (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - ものすごくおもしろくて、一気読みもしたのに誤って低評価を押してしまいました…!本当は心からの高評価です、おもしろかったです!嫌な気持ちにさせてしまったらすみません…! (2020年10月14日 22時) (レス) id: 02bdc07e91 (このIDを非表示/違反報告)
kjars8888888(プロフ) - やっぱアジさんの裏稼業が最高だな!! (2020年9月21日 23時) (レス) id: 55f2f63f60 (このIDを非表示/違反報告)
mgrwtnb(プロフ) - 完結おめでとうございます!最後まで涙が止まりませんでした。これからも応援してます! (2020年9月17日 20時) (レス) id: 1e6ed00ec9 (このIDを非表示/違反報告)
ひな(プロフ) - 完結おめでとうございます。とても面白く、更新を毎日楽しみにしていました。これからも応援してます! (2020年9月15日 22時) (レス) id: afba355943 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2020年8月29日 15時

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