15 ページ15
何故だ。深澤の回らない頭が混乱した。
どうしてだ。自分は仇の息子なのに。助けるどころか恨まれたって可笑しくはないのに。
最近は一人で勝手にこそこそ動き回って、誰に何を聞かれても何も答えなくて、信用を失うような真似しかしてこなかったのに。
「助けに来たのが信じられない、なんて顔してますね。見ます?」
嗤ったFが手下に指示を出し、横たわる深澤の目前にPCを置かせた。
そこでは確かにあの八人が、各々の最大限の力で戦っていた。
__待てよ、可笑しくないか……?
どうして
決して黒には染まらない強く清い純然たる白、そんな思いで名付けた彼が何故。しかも銃まで持っているではないか。ついに黒く染まったのか。本当に?
だとしたら、何故彼にそこまでさせて自分を助けに来たのだ。自分にそんな価値があるとは思えないのに。
何故。どうして。その思いだけが深澤の脳内を占めていく。
日頃良い行いをした訳でもない。普段の仕事はサボってるし、何回も人のおやつ食ったし、勝手に散財するし、末っ子相手にゲームで手加減しないし、あとは……?
とにかく、自分は助けてもらえるような人間じゃない。彼等が自分のために傷を負う必要は決して無いのだ。助けなくていいんだ。なのに。
iw《俺達は9人で一つだ。必ず全員で帰る》
相棒の声が聞こえた時、堪えきれない何かが込み上げてきた。
これ以上誰にも傷ついてほしくなかったから、一人でここに来た。
これ以上誰にも傷ついてほしくなかったから、一人で全部終わらせようと思った。
覚悟は決めてた。死ぬ気で臨んだ。案の定死にそう。
でもそれで良いと思ってた。こいつを殺せるなら、みんなを守れるなら俺は死んでも良いって思ってた。
……でも、でもね。お前らの顔見たらもう、限界だわ。
みんなといるのが楽しすぎたせいで、みんなが大好きすぎたせいで、今すっごく怖いんだよ。
独りで戦うのは、独りで死ぬのは、やっぱりどうしたって怖いよ。まだまだ9人で馬鹿やりたいんだよ、生きたいんだよ。
情けないよな。俺、Ownerなのにな。確か最年長なのにな。
でも……、でも……!!
fk「……ごめ、」
「あ?」
fk「……て、」
「はい?」
fk「たすけて、」
深澤の目から、口から、本心が零れたその時。
2405人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
長谷川遥香(プロフ) - 完結したけど続きでリクエストバージョンも見たいです! (2022年1月3日 21時) (レス) id: 3679b26edd (このIDを非表示/違反報告)
雷(プロフ) - ものすごくおもしろくて、一気読みもしたのに誤って低評価を押してしまいました…!本当は心からの高評価です、おもしろかったです!嫌な気持ちにさせてしまったらすみません…! (2020年10月14日 22時) (レス) id: 02bdc07e91 (このIDを非表示/違反報告)
kjars8888888(プロフ) - やっぱアジさんの裏稼業が最高だな!! (2020年9月21日 23時) (レス) id: 55f2f63f60 (このIDを非表示/違反報告)
mgrwtnb(プロフ) - 完結おめでとうございます!最後まで涙が止まりませんでした。これからも応援してます! (2020年9月17日 20時) (レス) id: 1e6ed00ec9 (このIDを非表示/違反報告)
ひな(プロフ) - 完結おめでとうございます。とても面白く、更新を毎日楽しみにしていました。これからも応援してます! (2020年9月15日 22時) (レス) id: afba355943 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:怜 | 作成日時:2020年8月29日 15時