Hope In The Darkness Ⅲ (ページ28)

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佐久間は頻繁に阿部の部屋を覗いていた。
今回の作業は長期戦になる事がわかっていたので、佐久間の時間がある時は阿部を見張っているようにした。時間がかかる時こそ、下手に倒れないように体調を管理しなければいけない。
阿部もそれをわかっている。だから佐久間のややしつこい介入を咎めなかった。

sk「……ねえ阿部ちゃん」
ab「ん?」
sk「ふっかが可笑しいって前言ったじゃん」
ab「うん、」

阿部はキーボードを叩く手は止めずとも、佐久間の話には耳を傾けた。

sk「……嫌な予感しかしないんだけど」
ab「……俺も。話聞いてるだけだけど」

阿部の返事を聞いて佐久間は抑えきれずに畳みかけた。

sk「だってあいつがあんなに動き回ってるなんて信じられないじゃん。俺達には何もさせてくれないのに」
ab「うん、」
sk「なんかさ……あいつが一人で俺達の事守ってるみたいじゃん」

佐久間の言葉で阿部は手を止めた。急に昔の記憶が過ぎった。
Owner、とあの時名乗った彼は、果たしてその単語の意味をちゃんと知っているのだろうか。

Ownerとは即ち所有者だ。言い換えてもせいぜい主人、くらいだろう。基本的にその程度の意味しかない。
所詮その程度だ。なのにアイツは、あの馬鹿は、Ownerが責任者か何かだと勘違いしてはいないか。

アイツが手に入れた情報は何だ。
阿部に話していない情報は何だ。
こんな電子機器じゃ頭の中をハッキングする事は出来ない。
目黒の事件の事も、宮舘と渡辺の事件の事も然り、本当に知りたい事はこんな技術では手に入らないのだ。

ab「……佐久間」
sk「ん?」
ab「悪いけど、出てってくれないか」

奴等が下手な動きをする前に、そしてあの馬鹿が本当に馬鹿な行動を起こす前に。
一刻も早く解析を終わらせて証拠や情報を集め、作戦を実行に移さなければいけない。

sk「……わかった」
ab「ごめんね」
sk「んーん、頑張って」

何かを掴んだアイツが、責任者としての責務を果たそうとしているのだとしたら。
だとしたら本当に馬鹿だ。でもそれを止められるのは阿部でも、佐久間でもないから。

ab「……照の事けしかけといて」
sk「りょーかい」
ab「俺も後ちょっとで一気に終わらせるから、それまでは」
sk「うん、無理はしないでね」