Hope In The Darkness Ⅲ (ページ19)

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阿部は思わず天を仰いだ。佐久間や目黒は口をぽかんと開けたまま固まった。
岩本も宮舘も渡辺も、全員が戸惑っていた。

iw「……マジかよ」
sk「そんな漫画みたいな話、本当にあるの」
ru「あったんだよ。あの大臣はその計画に加担してた。でも途中で怖気付いて手を引こうとした。だから」
ab「口封じした、と」
ru「多分だけど」
nb「なんでそんな事お前が知ってんの」
ru「……そういう場で、いろんな人に」
dt「もういい、ごめん」

＿＿厄介な事になった。
阿部は内心毒づいた。厄介だ。厄介にも程がある。
国家転覆を狙うという事は、相手は恐らくそれなりの権力者。政治関係の人間か、何処ぞの組織のトップないし幹部か?
何れにせよ、ラウールを狙う相手は相当力のある人間だ。権力的にも、即ち武力的にも。

ぶっちゃけ総理が死のうと国家が転覆しようとどうでもいい。政治や法律とは無縁な世界で生きているのだ、その辺の事情がどうなろうと知るか。
ただ、ラウールを守るためには相手を潰さなければいけない。なんならその大それた計画の阻止という、ヒーロー紛いの行動を起こす事になるのかもしれない。
やらないなんて選択肢を選ぶつもりは毛頭ないが、やる事があまりにも面倒で厄介である。相手の規模次第では、いくら職人集団と言えど命の保証は出来ない。

ab「……その話してた相手の名前、わかる?」

阿部は少々苦い顔をしたラウールに尋ねた。ラウールはしばし考え込むと、やがて口を開いた。

ru「確か、Fって言ってた」
dt「F?」

思わず声をあげたのは阿部ではなく宮舘。ラウールに向いていた目が宮舘に集まった。

dt「本当に……Fなんだよね」
ru「うん」
ab「舘さん?」
nb「お前何か知ってんの」

一瞬渡辺を見やった宮舘は僅かに目を泳がせた後、手に入れたばかりの情報を共有した。

dt「Fっていう奴が……翔太の親を始末させた」
sk「え」
iw「翔太の親って、」
nb「お前まさか、出かけてたのって」
dt「会いに行った、親父に」
nb「……そう、か」

何故今になって、彼は過去と向き合ったのだろう。何も知らない渡辺は複雑な気持ちになった。
その傍らで阿部は眉間に皺を寄せていた。

ab「大臣暗殺を依頼した男は6って名乗ったらしい」
iw「6?」
ab「Fではない。そこが一致しないと話がややこしくなる」

困惑を表した阿部を助けたのは、今までずっと黙っていた目黒だった。

mg「……同じ人じゃないの」
ab「え?」
mg「Fは、アルファベットの6番目でしょ」