Hope In The Darkness Ⅲ (ページ2)

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ab「ちょっと待ってて、思い当たる節がある」

阿部がキーボードを素早く叩き始めた。
その間にラウールが詳しい話をする。

ru「意識が戻った時、凄く視界がぼんやりしてたんだけど……俺はステージみたいな場所にいて、お客さん、みたいな人はその下で立ってたのはわかった」
fk「うん、」
ru「でもそんなに広くなくて、暗くて、俺にだけはライトが当たってた。スピーカーみたいなのもあった気がする。そういう場所って……」
ab「ライブハウスだね、ここじゃない?」

阿部がラウールにPCの画面を見せた。
そこに映っていたのは見覚えのある場所。あの時の景色はぼやけていたが間違いない、ここが地獄の入り口だった。
背中に冷や汗が伝う。ラウールは顔面蒼白だった。

ru「っ……ここ、です……」
ab「ありがとう、もう見なくていいからね」
sk「大丈夫だから、ね」

佐久間に宥められながらラウールは深呼吸した。
＿＿大丈夫、ここは地獄じゃない。

ラウールを佐久間に任せる事にした目黒は、深澤と共に阿部に話を聞く。

mg「どういう事すか」
ab「人身売買する時にいつもここを使う組織があるんだよ、多分そこだ」
fk「なるほどな」
mg「……何でラウールを」

目黒の怒りが滲んだ呟きを拾ったのか、ラウールが消えそうな声で呟いた。

ru「売られた、かも」
ab「……どういう事?」

ラウールは一瞬阿部の顔を見た後、俯いて話を続けた。

ru「実は親が借金抱えてて……毎日取り立て来てて」
mg「借金、」
ru「それがある日突然来なくなって、それからすぐ誘拐されて……親は元々出来のいい兄しか可愛がってなかったし、俺には無関心だったし」
sk「……想像、だよね」
ru「そう、ですけど」

深澤や阿部は黙っていた。証拠は無いが恐らくその推測は正しい。
目黒は眉間に皺を寄せ、佐久間はラウールの背中を撫で続けた。

愛の反対は無関心。彼は与えられるべき愛を与えられずに育ち、捨てられた。
ならば彼に愛を与えてやれるのは誰だ。

fk「よし……ラウール、家族の事は忘れろ」

ラウールが顔を上げる。深澤は優しい、芯のある声で続けた。

fk「俺達がお前の事を一生大切にする、約束する」

ラウールは言葉に詰まった。
深澤の言葉に、阿部達の優しい表情に、言葉より先にこみ上げてくるものがあった。

fk「俺達が……ラウールの新しい家族になる」

その言葉でラウールはゆっくり崩れ落ちた。
こんなに暖かい涙を流したのは初めてだった。