Hope In The Darkness Ⅲ (ページ1)

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ラウール達が深澤に連れられてやってきたのは阿部の部屋。
中では仕事終わりの阿部がPCと向き合っていた。

fk「ラウール、阿部ちゃんに協力してくれないか」
ru「協力って……?」
ab「……ラウールがああなるまでに何があったか、教えて欲しいんだ」

ラウールはその言葉で身を固くした。その様子を見て阿部がすぐ説明を付け足す。

ab「実は、ラウールを拐った組織を特定して潰そうと思ってるの」
ru「潰す、」
ab「思い出したくない事を思い出させる事になるのはわかってる。でも、ラウールみたいに苦しむ子をこれ以上増やしたくないし」
ru「……っ、」
fk「ってのは建前で、ただラウールを酷い目に遭わせた奴等にやり返したいだけ」
ru「……え」
fk「だって腹立つじゃん?」

ラウールが深澤に目線をやった時、深澤はへらりと笑っていた。
佐久間と目黒は何も言わない。反対する気はさらさらない。

ab「勿論ラウールが嫌なら何もしないけど……基本やり返すつもりでいる」
fk「どうする? やめる……?」

ラウールは一瞬迷ったがすぐに首を振った。
奥底に封じ込めていたやり場の無い怒りが、ざらついた感情がふつふつ蘇っていた。
自分を拐った組織は悪だ。悪相手に何をしたって、文句を言われる筋合いなどないはずだ。

ru「……やってください」
fk「……よし」
ab「じゃあ……覚えてる事、教えてくれる」
ru「……はい」

ラウールは記憶を辿りながらゆっくりと話し始めた。
約半年前に誘拐された事、気づいた時にはオークション会場のような場所で晒されていた事、その後再び意識を失い、目を覚ました時にはあの家にいた事。

ab「どんな場所に連れていかれたかわかる? それかそこで見たもの。何でもいい」
ru「……ぼんやりしてたからあんまりわかんない」
fk「……薬でも使われた」
ab「かな、」

ラウールは必死で記憶を辿った。それはつまり、経験した恐怖をも辿る事を意味する。
いつの間にかラウールの体は震え始めていた。いち早く気づいた佐久間が優しくラウールの肩を包む。

sk「無理しなくていいからね」
ab「ごめん……やっぱり、」
ru「大丈夫、です」

食い気味にラウールが答えたので阿部は口を閉ざした。彼は彼で向き合い、戦おうとしている。
静寂が部屋を包んだ後、考え込んでいたラウールが顔を上げた。

ru「……ライブハウス」
fk「ライブハウス?」
ru「あの会場、ライブハウス……かも」

その情報は阿部が組織を特定するのに十分なものだった。