22 ページ22
目黒の家族を殺したのはある組織の下っ端のチンピラだった。
組織の命を受けて一家を殺したのか、個人的に因縁を作ったのか。
彼は事故で死んだのか、自ら死を図ったのか、圧力にその命を潰されたのか。
背景も勿論気になったが、そこまで調べるには一週間という期間は短すぎた。その前に目黒が何をしでかすかも分からない。
だから最も重要な事実を突き止めた時点で阿部は深澤に話し、そのまま目黒に打ち明けた。
mg「……死んでる?」
酷く掠れた声だった。顔に差した赤が引いていくのが誰の目から見てもよく分かった。
目黒がこの数年犯人を必死で探しても見つからなかったのは、相手がとっくにこの世を去っていたから。
mg「……死んでるの」
周りの人間全てに不信感を抱いてから、施設を抜け出して独りになって。
路地裏で偶然銃を拾ってから、必死でその使い方を覚えて。
銃撃だけではきっと生きていけないから、体術もナイフ裁きも独学で身につけて。
mg「……本当に?」
食い物に困れば残飯を拾って、腐っていても死ぬよりましだと口にして。
穴を晒せば稼げると気づいてからは、金にならないプライドも捨てて。
絶対に死にたくないという気持ちが度を超して、気づけば眠れない体になっていて。
ab「……本当だよ」
どんな地獄を見ても、仇を討つために必死に生きてきたのに。
どんなに死にそうになっても、恨みだけを生きる糧にしてここまで来たのに。
その恨みをぶつける相手はもういない、だと?
自分が間違っていると思う度、自らに向けた引き金を引いた。
神なんて信じなくとも家族は導いてくれると思っていた。
何度も引き金を引く度、自分は間違っていないと教えてくれていると思った。
それが蓋を開けた結果これだ。今までのは何だ、偶然か?
結局自分が信じていた者は? 幻想だった?
＿＿だったら、俺は?
何のために……生きてきた?
ab「……目黒」
大切な家族を奪われて、法なんて甘い裁きじゃ気が済まないからこの道を選んだのに。
身を削って、他人を苦しめて、いくつもの命を奪って、それでも必死に生きてきたのに。
数え切れない罪を重ねて結局自分は汚れただけ。社会のゴミに成り果てただけ。
mg「はは、」
全てが急に馬鹿馬鹿しくなって、気持ち悪くなって、どうでも良くなった。
＿＿こんな奴に生きる価値なんてない。
ab「目黒!」
mg「あははっ……!」
彼の信念が砕けた瞬間だった。
生きる意味を見失った彼は、その夜、病院から消えた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1673人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
怜(プロフ) - 如月ﾖｼﾉ。さん» ありがとうございます! そうですめめです! ゆっくりですがこれからもお付き合いよろしくお願いいたします! (2020年7月16日 21時) (
レス) id: 03141f9b41 (このIDを非表示/違反報告)
如月ﾖｼﾉ。(プロフ) - 移行おめでとうございます！次の加入組はめめですかね？今後の展開も楽しみにしています！ (2020年7月13日 0時) (レス) id: 3bc10946d5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：怜
| 作成日時：2020年7月12日 15時
