hope 〈5〉

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深澤 side


何も考えなかった。

非常階段を駆け上がっている時、

何度も翔太の声が木霊して、嫌になる。





「っ、遅くなった」



渡「ふっか先生！」



「A〜、大丈夫だからな、」



俺の事を今か今かと待ち侘びていた翔太と、
俺とほぼ同タイミングで来た佐久間。



「ん、ルートもう一個追加して」



翔太も佐久間も、俺の指示を先読みして
バタバタと動いてくれて有難い。



「ごめんね〜……舘さん呼んでくれる？」



心臓発作に変わりないけど、
Aのことになるとどうしても不安になってしまう自分が居る。



血色の悪い顔色と、

みんなの不安そうな眼差し。




舘さんはナースステーションに居たのか、すぐに駆けつけてくれた。



舘「あー、、点滴こっちにしたら？」



「うん…だな、」



舘「ふっか？」



「…」




なんか、




やっと今、




あぁ、Aが発作起こしたのか。なんて
実感した。


やっぱり人は必死になると、
大切なものはちゃんと見えなくなるらしい。




人の死はいつやって来るか分からない。





俺って、何が出来るんだろう。





「っ、…ﾊｧﾊｧ、」



舘「ん、大丈夫だよ」




今日俺何したっけ？
誰かを助けられたっけ？




分からなくなる。





舘「大丈夫大丈夫、ちょっと今日は忙しい日だったよね。」



俺の背中に暖かい手が乗っかる。




「…っ、ふぅ、」



舘「そうそう…大丈夫、出来てるよ」



ピコピコと鳴る電子機器。


これが、Aが生きている証。




暖かな手は少し離れて、
引き換えにさっきよりも小さな手が乗っかる。



舘「俺やるから、ふっかちょっと休んで」



視界の端でAにごめんね、と言いながら点滴を刺す舘さん。



佐「大丈夫でやんすよ〜、Aは強いでやんす！」



へへっと笑う声に連動するように、
ぽんぽんと俺の背中を叩く佐久間。




「…ん、ごめん焦った」



佐「だぁ〜〜いじょ〜ぶ〜〜(笑)」



「なんだよそれ(笑)」



いつも笑わせてくれる彼に感謝しながら、
でもこの場を離れたくもなくて俺はただぼーっと立ち尽くしていた。

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