6. ホワイトバースデー ページ8
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卒業式も、終業式も終わって
とうとう学生は休みモード。
習い事の帰りに、友達におめでとうと言われて
何のことだろうとよく考えてみれば自分の誕生日だった。
今はただ動いてきた体の感覚にがまだ戻らずにフワフワとしている。
加えて冷たい風、なんだか11月みたい。
プレゼントは貰いたいけどイマイチ欲しいものがない、物欲が欲しい。
欲しいもの…なんだろう。
雨が降りそうな曇雲を赤信号の前に立ってぼうっと眺めた。
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「に、兄ちゃん!!チョコがぁチョコがぁ!!」
「うぉ!どうなってんだこれ!」
ブスブスとなべのそこから焦げる匂い。
案の定鍋のそこは焦げたチョコレート。
湯煎で溶かさなくたっていいなんて思った俺達が馬鹿だった、だが失敗は成功を招くもの。
次で最後の数枚になる板チョコを今度は本のレシピに従って慎重に作り出す。
「兄ちゃぁん…姉ちゃんもう帰ってくるんじゃ…」
「諦めるな百太郎、まだ大丈夫だ」
いつもAが帰ってくる時間まであと少し。
溶かしたチョコを冷やして冷やして、なんとかぎりぎりの所で完成する。
3/20今日は妹、Aの誕生日。
それに加えて遅れたホワイトデー。
「百太郎、お前はAに何をやるんだ?」
「俺は靴下とパーカー!兄ちゃんは?」
本当はぴゅん助をって思ったんだけど…と言う百太郎の横で、俺は…と慣れない女物のわからないブランドの紙袋をごそっとする。
出したのは白い色をした財布。
俺も百太郎も、動物と、スケートと水泳にしか興味の無い、まるでほかに物欲のないAをよく観察して選んだプレゼントだ。
女物がよくわからないから俺は松岡を連れて歩いたけれど、自分に免じて悪くは無いと思う。
と言うか俺のセンスが悪いわけがない。
『ただいま。わ、諭吉さん〜ただいま〜』
玄関から聞こえる声に俺も百太郎もリビングの入り口左右にクラッカーを持って隠れ立つ。
どんどん近づく足音ににやっとして、影が見えたところで思いっきり紐を引いた。
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「「誕生日おめでとう!!!!」」
リビングに入った途端、両サイドから大声とクラッカーが飛ぶ。
大笑顔で手造り感がマックスな不細工な生チョコと
二人からもらったプレゼントを見て泣き笑い。
そしたら2人はすごく笑顔になって
私が今欲しいものは、兄ちゃんと百君の笑顔なんだなぁなんて。
近寄って2人の事をきつく抱きしめたら思わずポロッとまた涙が出てしまった。
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とびっ子??(プロフ) - 樹鈴(じゅり)さん» ありがとうございます! (2018年7月30日 20時) (レス) id: c9d40c7bd4 (このIDを非表示/違反報告)
樹鈴(じゅり)(プロフ) - ゆぽんずさん» リクエストありがとうございます!了解です! (2018年7月29日 19時) (レス) id: 08b06fceb0 (このIDを非表示/違反報告)
樹鈴(じゅり)(プロフ) - とびっ子??さん» リクエストありがとうございます。先輩組かっこいいですよね、少しお時間かかりますが必ず投稿したいと思います! (2018年7月29日 19時) (レス) id: 08b06fceb0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆぽんず(プロフ) - 見るのいつも楽しみにしてます!!凛ちゃんとの甘々を読んでみたいです!! (2018年7月24日 17時) (レス) id: 7383221981 (このIDを非表示/違反報告)
とびっ子??(プロフ) - いつも楽しく見させていただいています!あの…リクエストなんですけど、夏也先輩とか尚先輩って出していただけないでしょうか! (2018年7月23日 3時) (レス) id: c9d40c7bd4 (このIDを非表示/違反報告)
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