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そんな訳で、コーヒーの粉をマグカップにティースプーン1杯入れる。あとはお湯が沸いてそれを注げば、Aさんの好きな美味しいインスタントコーヒーの完成だ。
……いや、待てよ、このまま単にブラック持って行ったところで、Aさんはそのまま仕事に戻ってしまうのでは?それってただコーヒーを淹れただけのパシリも同然では?
「それはつまんないな」
「ん〜?何か言った〜?」
「いや、何も!」
「そう?聞き間違いか」
ほら、今のもどうでもいいかと思ったらすぐ仕事に戻った!確かに何も、とは言ったけど!もうちょっとこっちに興味持ってもいいじゃん。
そんな不満を込めて、いつものマグカップにもう1杯、2杯粉を追加する。うん、これくらいなら飲めなくはないけど、めちゃめちゃ苦いぐらいになったはず。ちょうどいいタイミングで沸いたお湯を注げば完成。
俺の分も一緒に作って──もちろんこっちは普通のブラックにしてある──、何も知らずに作業を続けるAさんのところへ持っていく。
「Aさ〜ん、出来たよ」
「ん、ありがとう」
Aさんはありがとう、と言う一瞬だけこちらを見て、それきりまた目線をパソコンに戻した。
けど、今の俺はそんなの気にもならない。だってあのコーヒーがびっくりするほど苦いって知ってるし。コーヒーならブラックも飲むけど、基本は苦いのが得意じゃないAさんなら、絶対反応してくれるはず。
じいっと見つめる俺に少しだけ怪訝な目をしながらも、そっとカップに口を付けたAさん。一口こくりと飲み込んで、それからなんとも言えない微妙な顔をした。
「……待って、なにこれ」
「ん〜、翔平ブレンド?」
「にっっっが……」
「あはは!」
余程苦いのか、資料を見ていた時よりもよほど眉間に皺を寄せている。その表情がおかしくって、思わず大声あげて笑ってしまう。それをしてしまって、Aさんに、じとっと睨まれるのもお約束。
「ねぇ、どうやったの、これ」
「粉3杯」
「エスプレッソかと思った……あ〜にっがい……」
「お砂糖いる?」
「いる、ミルクもいる」
「はぁい」
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久々、クソガキモード翔平くんを書けて楽しいです もうちょっとこのおはなしが続く予定です🧸
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作者名:haru | 作成日時:2023年5月3日 0時