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残念ながらジャンケンに負けたので渋々ハンドルを握り、ジムまでの道を行く。
「あ〜、ラテ飲みたいなぁ」
「帰りね。嫌でしょ、ラテ持ってジム入るの」
「うん」
「じゃあ私はフラペチーノにしようかなぁ。新作出たらしいんだけど」
「痩せるためにジム行くのに正気?」
「……そうでした」
完全に忘れてた。翔平くんを送ってそのまま帰ろうとしてた。あぅ、と信号待ちでハンドルに寄りかかれば、すぐに「ほら、青だよ」と助手席から急かされる。まだだよ、嘘言わないで。
「上のクリーム除けたらセーフとかならない?」
「ならないでしょ。素直にコーヒー飲めばいいのに」
「はぁい……」
翔平くんに普通に窘められて、フラペチーノは諦める。ノンファットにしたらセーフじゃないかな、なんて考えが浮かんだけど、これ以上言うとさすがに見限られそうだから、やめておく。
遠のいた新作フラペチーノに、憂鬱な気分になりながらそのまま運転を続ければ目的地であるジムの駐車場に着いた。軽やかに車から降りる翔平くんと比べて、足取りの重い私。
「着いちゃった……はぁ……」
「そんなに運動、嫌?」
「いや、動くのはそこまで嫌じゃないんだけど……」
この後着る服と、あとここで今日も元気にアスリートをしごいているだろうあのトレーナー兼ボディビルダーを思い出すと憂鬱になる。
「まぁここまで来たらやるしかないし……頑張ります」
「うん、偉い偉い」
にこにこと笑いながら、ぽんぽんと頭を撫でられる。それは嬉しいけど、この後は相変わらず嫌だな、めんどくさいな。でもやらなきゃ。こんなぷにぷにで翔平くんの隣に立っている訳にもいかないし。
うん、大丈夫。そう思いながらエレベーターを降りた瞬間、バカでかい声が出迎えてくれた。
「お〜!!昨日ぶりですねぇ、大谷さん!いやぁ、よく来てくれましたなぁ、はいはい着替えてきてくださいねぇ。すぐトレーニング始めれるよう準備しときましたからねぇ」
「……うっす」
翔平くんですら引き気味のこのハイテンション男こそ、このジムの経営者兼トレーナー兼ボディビルダー。またの名を、私の大学の先輩。
そのまま翔平くんを構い倒すつもりなのかなぁ、なんて考えた瞬間、先輩が体ごとこちらにズレてきた。
「うぉっ、Aやん!なになに、とうとうお前も体動かす気になったか?ボディビルダー目指したくなったか?」
「違う……圧……」
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こういう1話限定の癖強オリキャラが好きです
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作者名:haru | 作成日時:2023年5月3日 0時