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「よっ!」
「……Aさん…………?」
今は確か、交流戦の真っ只中なかったっけ。ついこの間、福岡で美味しい豚骨ラーメンを選手と食べに行ったって言ってたじゃん。まだまだ前半だからね、交流戦とんとんで終わりたいなぁなんて話をしていたのに、どうしてこんなところにいるの。
いまいち現状を理解していない俺を置いて、2人はずかずかと家に入り込んでくる。いや、待って、早いよ、早い。状況説明とか、あっても良くない?
とりあえず、何か説明をしてもらわないと。その一心で、リビングへ向かうAさんを引き留めようと手を引くより先に、Aさんが下から顔を覗き込んできた。
「ん、意外と顔色は良さそうだね、安心した」
「っ……!」
Aさんの目が柔らかに細められるのに、きゅうと胸が締め付けられる。
だって、それだけもう、どうしてAさんがここにいるか分かってしまったから。
まず俺の様子を気にしたこと。
わざわざ一平さんに連絡を入れてまで、ここに来たこと。
それからその、困ったような、それでいて安心したような笑い方。
俺の状況も、情けない心情も、全部全部理解してここにいるんだと、そう分かった瞬間、玄関先の廊下でずるずるとしゃがみこんでしまった。
「どうして、どうしてそんなに優しくしてくれるの……、俺はさ、Aさんとは元々チームどころかリーグも違って、しかも今はアメリカだよ?そんな俺に……どうしてこんなに……」
「……好きだから」
その言葉に、はっと顔を上げれば、俺の大好きな、最初に出会ったときからちっとも変わらい素敵な笑顔で、Aさんがこちらを見ていた。
「好きだから。それ以上の理由なんている?」
「Aさん……」
とんと目の前に腰を落とされて、目線が合う。綺麗なその黒い瞳に、自分の情けない顔が写っていて、思わず目を伏せた。
「……あのね、翔平くんは私にとってヒーローなの。初めて見た時からずっと。二刀流なんてすっごいことにチャレンジして、海を渡ってメジャーリーガーになって。そんなすごい存在」
「そんな、そんなことないよ……今こうやって、引きこもってる俺を見ても同じこと言える?」
「言えるよ。だからね、私にしてあげられることならなんだってしたい。君のためならこうやって海だって越えてあげる。私じゃ役不足かもだけど……どんな君でも支えたいって思うよ。君は私のヒーローなんだから」
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2人が会話した…… 何話ぶりなんですかね……🥹
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作者名:haru | 作成日時:2023年5月3日 0時