2. 桜の再会 ページ2
博多支部の前の通りには、桜の木が並んでいて。
春風に揺られて花びらが舞う様子に、思わず足を止める。
日本人に生まれて良かった、って思う瞬間。
通勤でこの景色が見れるなんて...凄く贅沢。
「ここの桜、綺麗でしょ」
空から、そんな声が降ってきて。
ピンクの花びらに混じって・・・赤い羽根が舞う。
「やっぱり...センパイは、桜が似合いますね」
ストン、と舞い降りた声の主。
あの頃とは違う・・・
少しだけ低くなった声、目下ろす視線。
ふわふわと風に揺られる伸びた前髪。
身体に収まりきらない程の立派な翼。
10年前と変わらない・・・光を集める琥珀色の瞳。
「・・・私？」
「ンハハ！貴女以外に誰がいるんです？...みょうじAさん」
大口を開けて笑う、ホークス。
黄色のサングラスを上にずらして、私を見る。
「久しぶりですね、センパイ・・・やっと会えた」
少し照れくさそうにそう言った君には、少しだけ少年の面影。
咲き乱れる桜の下、私達の間を春風が吹き抜ける。
こんな再会、誰が想像出来ただろう・・・
ドラマみたいな光景に、上手く言葉出てこない。
「私の事、覚えてるの...？」
「なーに言ってんすか！忘れるワケないでしょ」
私の隣に並んだホークスが、桜の木を見上げる。
「”どんな時でも、桜を愛でる心は...ずっと持っていたい”・・・桜見る度に、思い出してた言葉です」
いつの日かの私の言葉を、ホークスが紡ぐ。
淡い記憶が、あの日の花びらと共に想い起こされる。
「センパイは、どこで桜を愛でるのかなーって...毎年、思ってましたよ？」
君と過ごしたのは、2年という短い時間。
トップヒーローの君の中で、私の存在なんてないも同然と思っていたのに。
「だから・・・また一緒に見れて、嬉しいです」
君の中に、私が存在していたことを知って。
なぜか・・・たまらなく、嬉しくて。
桜の絶景も相まって、胸が熱い。
「センパイは・・・覚えてますか？」
今や知らない人はいない程、有名になった君。
世に出る前の君を知っている事が、こんなに嬉しい事だったなんて...
「・・・背伸びたね」
「確かに、俺成長期遅かったっすね」
「髭、生えたね」
「アハ、センパイてば見た目ばっか。他にも色々変わりましたよー？」
楽しそうな君が、私の顔を覗く。
「センパイ、ようこそ博多へ」
ニカッと笑った君が、太陽のように眩しい。
10代の静かな少年だった君が・・・色濃く上塗りされた日。
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作者名：emma | 作成日時：2022年7月10日 19時
