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94:ほうじ茶 ページ9

降谷side




「今のなし、忘れて下さい。」




『死ぬつもりなのか?』




「違いますって、忘れて下さいって言ってるじゃないですか!」




そんな目に涙を溜めて、今にも壊れてしまいそうに小さく震えながらそんな事を言われて、忘れられる訳がない。




ほっとける訳がないだろう。




『協力する。....だから絶対死ぬな。死のうとするな。』




「だから、そんなんじゃないって言って.....」




『もう、大事な人を失いたくないんだよ。』




俺はAの言葉遮って、そう言った。




「私は降谷さんにそんな風に思ってもらえる人間じゃない。」




『それでも、Aがどう思っていようと、俺にとってAは大事なんだ。......好きなんだよ。たとえAがとんでもない悪人だったとしても、そこに一緒に堕ちてしまいたいと思うほど、好きなんだ。』




「それはだめよ。私は降谷さんのそのまっすぐで綺麗で正義にあふれた瞳に惚れたんだから。」




Aが俺の頬に手を添えて言った。




「降谷さんは、貴方は、この国を救う人なんだから、堕ちてもいいなんて言わないで。私がこんな組織壊滅の計画を立てたのも、降谷さんがいたからなんですよ。降谷さんみたいに闘いたいって、強くなりたいって思ったから。」




Aが俺の頬に手を添えたまま、瞳をじっと見つめて言った。




「協力......してくれますか?」




『あぁ、ただ........』




"生きろ" と言おうとした俺の言葉を遮るように、A自身の唇で俺の唇を塞いだ。




まるでその言葉は聞きたくないって言っているようだった。




数秒の触れるだけのキス。




それでも、Aの唇の柔らかさ、暖かさから、Aが生きてるんだと実感した。




「よろしくお願いしますね。」




そう言うAはさっきより震えは治まっているものの、やっぱりほっとけばそのまま消えてしまうんじゃないかと思ってしまう。




『あぁ。』




でも1度塞がれた言葉を、再び口にすることはできなかった。

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作者名:eri | 作成日時:2019年5月22日 20時

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