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91:ライチ ページ6

降谷side





午後10時15分。




急に会議が入ってしまって、早めに切り上げたものの、約束の時間に遅れてしまい、駐車場から小走りでラウンジへと向かう。




静かで人気のないラウンジに、大きなサングラスをかけた金髪の女が一人、柱にもたれかかり俯いていた。




『A?』




そう声をかけると、その女は顔を上げた。




「降谷さん.......」




もともと細かったAだが、3年前よりさらに少し痩せたように感じる。




真っ黒で肩下くらいまでだった髪の毛も、金色に染められ腰あたりまで伸びている。




服装の雰囲気も随分変わって、全身黒のパンツスタイルに、昔は滅多にかけてなかったサングラスをかけている。




それでもAだった。




聞きたい事は山ほどあるはずなのに、いざ目の前にAが現れると、何を言ったらいいか分からなかった。




「えっと......」




Aは何か言い出そうとして、言葉を詰まらせた。




『ん?』




すると彼女はいきなり俺の手を引いて歩き出した。




エレベーターに乗り、最上階の35階のボタンを押す。




2人きりのエレベーター内で気まずい沈黙が続く。




『ちゃんと食べてるのか?昔より痩せただろ。』




そんな空気に居た堪れなくなり、俺はそう尋ねた。




「ふふっ」




『何が可笑しいんだ。』




「いや、降谷さん相変わらずだなぁって思って。」




『どこが?』




「うーん、自分の事棚に上げて人の心配ばっかするところ? クマ隠してるのばればれですよ。」




電話がかかってきた時からずっと今にも泣きそうな声ばかり聞いていた俺は、Aの昔のような笑い声に少し安心した。




「まぁでも、そういう所が好きなんだよなぁ。」




『は?』




「なーんてね。」




『Aのこそ相変わらずだな。』




チーンという音が聞こえ、エレベーターの扉が開く。




俺は、先に降りたAを後ろから追いかけた。

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作者名:eri | 作成日時:2019年5月22日 20時

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