88:プーアル ページ3
降谷side
お昼を過ぎた頃、俺はAが片付けてくれた資料の一部を、上へ提出しに行こうと、資料の山に手をかけた。
提出する分の資料を抱え、デスクから立ち上がると、資料の隙間から1枚の封筒が落ちてきた。
『は.......?』
その封筒を拾い上げた俺は、そんな間抜けな声を出してしまった。
その封筒には、Aの字で "辞表" と書いてあるのだ。
は?
Aが公安を辞める?
なんで?
ほんとに辞めるのか?
頭の中に数え切れないほどのハテナが浮かぶ。
「...さん! 降谷さん!」
部下の声に我にかえる。
「降谷さんどうしたんですか?」
『Aが公安を辞める.....』
俺がそう口にした時、部下たちがどんな顔をしたのか覚えていない。
俺はそのままオフィスをでて、Aに電話をかける。
ーこの電話は現在使われておりません。
スマホから聞こえてきたその音に、俺は絶望し目の前が真っ暗になり、手に握られたスマホを落としてしまった。
それでもやっぱり、Aが俺の前からいなくなるなんて、公安を辞めるなんて信じられなくて、僅かな望みにかけて俺は愛車の乗り込み自宅へと向かった。
が、そんな俺の望みはいとも簡単に潰されたのだ。
「A!!!」
自宅の部屋の玄関を開けると同時に、大きな声でAの名前を呼ぶ。
Aが寝泊まりし、荷物を置いていた部屋のドアを開けるも、そこはもぬけの殻。
人の気配だけは微かに残っているものの、Aが生活していた跡は何一つ残っていなかった。
リビングへ向かうと食卓テーブルの上に1枚の紙と鍵が置いてあるのを見つけた。
"今まで本当にお世話になりました。
許して欲しいなんて思わない。
ただ私の事は忘れてください。
本当にごめんなさい。"
どうして。
どうしてみんな俺の前からいなくなってしまうんだ。
ヒロも麗華も、そしてAまで。
俺は昼下がりの太陽が差し込む部屋で、数年ぶりに涙を流した。
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作者名:eri | 作成日時:2019年5月22日 20時